一方で、「なんでもそこそこできるし、常識的で、視野が広くて、バランスがいい」という東大生。こういう人は、面接だと評価されます。減点しどころがないからです。
でも、僕の観察では、こういうタイプが社会に出て「あれ、思ったより活躍しないな」と言われることが、実は多い。
なぜかというと、彼らは『PLUTO』のロボットに近いからです。すべての選択肢が見えているから、どれを選ぶ理由も相対的に見えない。だから、大きな決断を迫られる場面で、微妙に手が止まる。極端に振り切れない。
もちろん、バランスがいいこと自体は美徳です。人間としては素晴らしい。
でも、こと「社会で突き抜けるかどうか」という一点で見ると、バランスの良さは、意外なほど武器にならない。
「バランスがいい」は、たぶん褒め言葉じゃない
だから、僕が採用や仕事の現場で東大生を見るとき、正直こっそりチェックしているポイントがあります。
それは、「この人、明らかにおかしいところがあるか」という一点です。
異常にゲームが好きとか、異常に電車に詳しいとか、異常に特定の学問に没頭しているとか。周りが引くレベルで、何か一つに振り切れている経験がある人。
そういう「極端さ」を一つでも持っている東大生は、たぶん社会に出ても活躍します。なぜなら、彼らはすでに「考えないで走る」という筋肉を、その趣味なり没頭なりを通じて鍛えているからです。
逆に、経歴も性格も好みも、全部きれいに整っている東大生には、少し慎重になります。頭がいいのは間違いない。でも、頭がいいだけだと、たぶんどこかで動けなくなる場面が来る。
繰り返しますが、僕の完全に主観的な見立てです。統計もエビデンスもない、ただの現場感覚。だから、この話は「一つの見方」として読んでいただければ十分です。
ただ、もしあなたが東大生の採用担当だったり、東大生と一緒に仕事をする立場にあるなら、履歴書のスペックの裏側に「この人の、明らかにおかしいところはどこだろう」という視点を一つ持ち込んでみると、案外、見えていなかったものが見えてくるかもしれません。
そしてもしあなた自身が東大生で、「自分はバランスがいいタイプかもしれない」と思うなら——たぶん、それは危険信号です。
何か一つ、周りに「そんなことしてバカじゃないの」と言われるくらい振り切れた没頭を、意識的に自分に持たせたほうがいい。
『PLUTO』のあのロボットが目覚めるために必要だったのは、完璧なバランスではなく、極端な感情のほうだったわけですから。

