――それで会いに行った。
当時の私は、肺がんでパニック症にもなった。病気は私にとって大きな出来事だったので、人生を振り返るきっかけでもあったんですね。
それで、まず過去のことを反省しました。その時々の理由はあったのかもしれないけど、私が傷つけてきたいろんな人に謝りたくなったんです。じゃあ、まず謝るべき相手は誰かと言ったら、母親だなと。
――正直ですね。実際に会ったことで、和らいでいったものはありましたか。
結果的には気持ちは変わっていきました。世の中で一番嫌いだった人を嫌いじゃなくなったのは、とても大きかったです。これまで私が嫌ってきた人や、嫌われてしまった人を、いつか好きになったり、好きになってもらえたり、許したり、許されたりする未来があるかもしれない。そう思って生きられるようになったことは、よい発見でした。
娘に「相談できる大人」を
――母親との関係があったからこそ、娘さんとの関係では気をつけてきたこともあるんでしょうか。
私は、「勉強しろ」って押し付けられてきたので、「勉強なんかしなくていい」って娘に言ってきたら、娘から「勉強するなって押し付けるな」と言われたことがあって。難しいんだ、というふうに思いましたけど。
――娘さんとは本音で話せる良い関係なのでしょうか。
仲は良いと思います。私が親として努力してきたことといえば、娘が相談できる大人をたくさんつくろうとしたことです。
――それは、シングルマザーで病気になったことも大きいのでしょうか。
そうですね。病気になってから、私が死んだあとに娘の味方になってくれる人をつくろうって考えるようになりました。それを念頭におくと、自分の主張は二の次になりまして、これまでは、自己主張で他人とぶつかっていたけれど、そんなことはすごく小さなことに思えるようになった。
それよりも、娘が相談できる、娘の味方になってくれる大人たち――私の前の夫やその家族、私の親、友人、同じマンションの人、学校関係者、すべての人と娘がうまくいくように、私はそことつながるように努力をしました。そこだけは努力しましたね。私なりに。

