また、登山が趣味でない人も、世の中全体が閉塞感に覆われていたなかで、手軽に楽しめるレジャーとして、あるいは健康を維持するための運動として、低山に足を向けはじめた。
さらに、ちょうどそのタイミング(2020年11月~)で始まったNHK BSプレミアム『吉田類のにっぽん百低山』も、ブームの追い風になった。
このようにして加速した低山ブームは、コロナの収束後も下火になる気配はなく、今もなお続いている。それには次のような要因が考えられる。
・山小屋の宿泊料やキャンプ場の幕営料が大幅に値上げされた
・居住地からのアクセスが便利
・日帰り、短いコースタイムでも満足度が高い
・子供から高齢者まで誰でも手軽に楽しめる
・高い技術レベルが要求されない
・費用があまりかからず、コストパフォーマンスがいい
遭難者数最多は東京の高尾山
コロナ禍によって火がついた低山ブームは、ちょっとした社会現象となり、テレビのワイドショーやニュース、大手新聞、トレンド雑誌などでたびたび取り上げられた。
登山専門誌も、それまであまり掲載しなかった低山特集を組むようになり、今では人気企画になっているという。
しかし、その一方で増えているのが、低山での遭難事故だ。
もともと山岳遭難事故は年々増加傾向にあり、とくに1990年代半ば以降は、一時的に減少することはあるものの、非常に高い水準で増加してきた。
とりわけ近年は、ブームに伴い低山での事故が目立つようになっている。
警察庁が毎年発表している山岳遭難事故の統計によると、遭難者数が最も多い山は東京の高尾山であるというデータが出ている。
観光地的なイメージのある標高599メートルの高尾山がそれほど危険な山だとは普通、とても思えないので、日本一標高が高い富士山や、3000メートル級の険しい峰々が連なる穂高連峰よりも遭難者数が多いという一面は、まったくもって意外であり、驚きをもって受け止められた。

