勝どきに5年間住んだのち、元の一軒家に家族で引っ越したという。理由は、両親が高齢になりサポートが必要になってきたことや、家業の工場のことですぐに対応できる場所にいたほうがいい、という思いがあったからだ。
「軽く認知症が入ってきた母は、平日は1日おきにデイサービス、週末はショートステイを利用しています。父は元気ですが、透析の日は半日くらい工場にいない日もあるので」
勝どき在住時に長女が生まれ、現在の場所に引っ越してから長男が生まれた。勝どき時代は長女を保育園に通わせて夫婦共働きの生活をしていたが、妻は「子育てに専念したい」と専業主婦になり、現在は自然豊かな郊外で4歳、1歳の子どもを育てている。
ドアを開けた先にある「幸せ」
田中さんが今感じている幸せな瞬間は、やはり家族との時間。工場内の一画を田中さんの仕事場として使っているため、自宅と仕事場の距離は徒歩30秒ほどの近さだ。
「仕事が終わって家のドアを開けると、上の子が『パパ、おかえり!』と言いながらバタバタ走ってきてくれるんですよね。その奥では、妻が下の子を抱っこしながらニコニコおかえり、と言ってくれる。その光景を見るたびに『家庭を持つって、こういうことなんだ』と噛み締めています。長い間、ずっと独りだったので」
長女の幼稚園が夏休みに入ると、妻はふたりの子どもを連れて実家に帰省する。
「その間は、いつも聞こえてくるはずの娘の声もなく、家の中がシーンとして寂しくなります」
ずっと独りだったという言葉に、心の奥がスッと冷えるような感覚がした。と同時に、家族が待つ家の扉を開けた時の彼の心を想像すると、その冷えた部分が芯から温まった。
幸せを掴むために努力とお金を惜しまなかった田中さんだが、実は今、大好きな飛行機に関する1回30万円超えの趣味に夢中だという。後編では現在の暮らしを詳しく紹介する。
(後編に続きます)

