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キャリア・教育

「道徳の教科化を思い出した」、小中学校の"情報教育"が大幅拡充へ "新設"は重い?授業時数は増えないというけれど…

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小学校のパソコンを使った授業
総授業時数を増やさずに情報教育を新設するが学校の負担は増えるという(写真:マハロ / PIXTA )
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端末が動かない。ネットワークにつながらない。アカウントに不具合が起きる。著作権や個人情報、生成AIの扱いで判断に迷う。対応する人がいなければ、最後に引き受けるのは教室にいる教師になる。

新しい役割を加えるなら、何をやめ、誰が実装を支え、現場で起きる問題を誰が引き受けるのかまで設計しなければならない。

なぜ、最も重い「新設」を選ぶのか

現行の学習指導要領でも、情報活用能力は「学習の基盤となる資質・能力」と位置づけられている。

国語では複数の情報を比べ、社会では統計や資料を読み、算数では表やグラフを扱う。総合的な学習の時間では、調べ、整理・分析し、発表する。情報モラル学習や端末活用もすでに行われている。つまり、「情報教育が存在しないから新設する」わけではない。

もちろん現状には課題がある。内容や担当が明確でないため、地域や学校による差が大きく、各教科にまたがるものは責任の所在もあいまいになりやすい。専用の枠を設け、系統的に学ばせる発想には合理性がある。

しかし、それは「現状に問題がある」ことの根拠であって、「新設が最善である」ことの証明ではない。既存教科を横断する共通カリキュラム、更新可能なデジタル教材、モデル単元、共通の評価指標を整える方法では実現できないのか。新設案と既存制度の強化案を比較する必要がある。

情報分野は変化が速い。一方、教科・領域を設ければ、学習指導要領、教科書、評価、教員養成、配置、予算が一体となり、簡単には変えられなくなる。最も変化の速い分野を、最も変更しにくい制度で運用しようとしていないか。

28年度以降の先行実施は、円滑な移行には役立つだろう。ただし、新制度への移行を前提とする「先行実施」と、新設そのものが最適かを確かめる「比較検証」は違う。まずは複数の方法を試し、子どもの学び、学校間格差、教員の負担、更新のしやすさを検証する。その結果によっては、内容、時数、位置づけを変更できる余地を残すべきではないか。

教育課程は、足すほど柔軟性を失っていく。新しい教科・領域は、現在の導入コストだけでなく、未来の改革コストまで増やすのである。

この構造は、多くの企業や行政組織にもある。新しい事業を始めるが、人は増えない。時間も増えない、既存業務も残る。研修動画とマニュアルだけが配られ、あとは「現場で工夫してください」と言われる。表の上では勤務時間が同じでも、現場では新しい知識、調整、判断、失敗のリスクが増えている。

必要であることと、新しい仕事として加えてよいことは同じではない。本当に始めるなら、何をやめるのか、誰が移行を支えるのか、責任を誰が引き受けるのかまで決めなければならない。「全部大切です」と言い続ける組織は、新しいことを始められない。良いものを全部残すことはできない。今も残す価値のあるものを選び直す必要がある。

情報教育には賛成である。文科省が既存内容と教科書を精選し、学校裁量を広げ、指導体制を改善しようとしていることも評価したい。

それでも、教科・領域の新設は極めて重い意思決定である。既存の仕組みを強化する方法では実現できないのか。先行実施の結果によって制度自体を修正できるのか。人員、設備、導入時の負担だけでなく、将来の変更コストまで見据えて最善と言えるのか。

情報教育が重要であるからこそ、その実現方法まで含めて議論することが、本当の教育改革ではないだろうか。

東洋経済education×ICTでは、小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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