そうした状況は、20代の若者の意識にも影響を及ぼします。20代が結婚できると思う世帯年収意識の中央値は、この期間に24.5%もインフレしました。同時に、出産(第一子)できると思う世帯年収意識の中央値も26.6%増です。若者の意識だけではなく、これは実体がそうなっているからです。ちなみに、この間の物価指数上昇は1割程度に過ぎず、実体インフレよりも「結婚と出産のインフレ」が過度に進んだと言えます。
そうした「結婚・出産のインフレ」とほぼ同じように、20代若者の「不安のインフレ」も起きています。若者の「将来の経済的不安」は23.7%も上昇しました。要するに、婚姻や出生が3割も減った構造的背景には、そもそも結婚や出産するための経済条件が3割近くもインフレしてしまい、それをクリアできている経済上位3割層は別にして、残り7割の中間層の若者にとって、結婚も子どもも「贅沢品・手に入れられない高額ブランド品」と化してしまったわけです。
「中間層」が細り、二極化する主観的な生活意識
もうひとつ、人々の主観的な「普通意識」もインフレしてしまっています。内閣府「国民生活に関する世論調査」から、生活の程度を上・中の上・中の中・中の下・下という五段階に分けて聞いた長期推移結果があります。上位2つ(上+中の上)を上位層、中の中を中間層、下位2つ(中の下+下)を下位層の三階層に分けて推移を示したものが以下です。

1970年代から2020年にかけて、中間層はおおむね50〜60%で一定でした。しかし、近年急激に下降して2024年には46.8%まで低下し、その代わり、上位層と下位層が増えています。つまり、真ん中の中間層が細ってきているということです。これは、かつて「皆が共有し、多くが属していた普通」が、上下に分かれ、二極化しつつあることを意味します。
留意すべきは、これは実際の所得階層の話ではなく、決して、貧困層や富裕層が増えているということを示すものではありません。あくまでそれぞれの人々の中において「自分は普通の暮らしを送れている」と思える人が減ったということを意味します。いいかえれば普通の基準が厳しくなったということです。

