平成になっても、観客のマナーは大して変わらなかった。1996年5月、ダイエーホークスは大阪日生球場での近鉄戦を終え、王貞治監督以下選手たちがバスに乗り込んだが、不甲斐ない負けが続いていたために激高したファンがバスを取り囲み、罵声を浴びせ生卵をぶつけた。負けたチーム、選手に感情をぶつけて責め立てるマインドは、今の韓国と何も変わらない。
Jリーグ創設が生んだ「ファン」から「サポーター」への転換
この風潮に変化が起こったのは、1993年の「Jリーグ創設」だったのではないか。筆者は、2016年に「野球崩壊」(イースト・プレス刊)という本を書いたが、この際に、Jリーグのファウンダーである川淵三郎氏に話を聞いた。川淵氏は「Jリーグでは、野球の用語を絶対に入れないようにした」と言い、「ファン」という言葉の代わりに「サポーター」と呼ぶようにしたと語った。
熱狂を意味する「ファン」から支援者を意味する「サポーター」に。これは単なる言葉の言い換えではない。外部からチームを応援する「ファン」に対して「サポーター」はチーム(Jリーグの場合「クラブ」)を支える立場を意味する。ある意味でサポーターは、クラブのステークホルダー(利害関係者)の末席に連なる存在になったといえる。
チームの勝ち負けに関して、ファンは結果論で一喜一憂するが、サポーターは勝っても負けても「自分たちの問題」として受け止め、クラブをより良い方向に向けるために「一緒に考える」。負けたクラブの監督、選手を一方的に責め立てることなど「ありえない」ことになる。
プロ野球の観客が劇的に変化したのは、21世紀になってからだ。当時の「私設応援団」には暴力団や反社会勢力のメンバーが交じっていた。彼らはチケットを転売したり、一般の観客とトラブルを起こすなどしていた。2003年、プロ野球12球団と球場経営企業、日本プロ野球機構のコミッショナー等が「プロ野球暴力団等排除対策協議会」を設立。2006年には「試合観戦契約約款及び特別応援許可規程」を設けて、暴力団や悪質な応援団を排除し、私設応援団による応援を許可制にした。

