今回のご相談に当てはめてみましょう。「いいから言うことを聞け」「しつけだから当然だ」という言葉は、まさに自分の正しさを疑わない「牧師」モードの思考パターンそのものです。
このような思考に陥っている方は、子どもの反応がどれほど悪化しても、自分の接し方を省みることがありません。子どもが反抗すれば「反抗期だ」と片づけ、口をきかなくなれば「思春期だからだ」と解釈します。原因のすべてを子ども側に帰属させ、自分自身のやり方は一切見直そうとしないのです。
しかし、筆者が38年間の現場経験を通じて確信していることがあります。それは、「子どもの態度は、ほぼ例外なく親の接し方の『結果』である」ということです。子どもが心を閉ざすのは、子ども自身に問題があるのではなく、心を閉ざさざるを得ない環境(コミュニケーション)がそこにあるからです。
再度、強調しておきたいのは、「怒ること」自体が悪なのではありません。真に問題なのは、「怒ることしかしない」「怒り方を振り返らない」「自分のやり方を疑わない」という姿勢にあります。これはまさに、グラントが警鐘を鳴らす「学び直すことの拒否」にほかなりません。
子育てにこそ「科学者」の姿勢が求められる
人を育てるということは、本来、非常に高度な営みです。企業で部下を育成するにも研修がありますし、教師になるにも長い訓練が求められます。ところが、子育てだけは何の準備も学びもないまま、ある日突然始まります。
だからこそ、本来は子育てほど「学び続ける姿勢」が問われる営みはないはずです。ところが現実には、「自分は親からこうやって育てられた。だから自分もこうする」という、無自覚な踏襲が起きています。
これはある程度、致し方ない面もあります。人は自分が経験したモデルしか持ち合わせていないからです。しかし、だからこそ「自分のやり方は本当にこれでよいのだろうか」と問い直す「科学者」の姿勢が不可欠なのです。
グラントは、科学者型の思考において最も重要なのは、「考えを変えることを弱さではなく進歩と捉えること」だと述べています。
「昨日の声かけではうまくいかなかったから、今日は別のアプローチを試してみよう」。このように考えられる親のもとでは、子どもとの関係が決定的に壊れることはありません。なぜなら、子どもは「親が自分のために変わろうとしてくれている」という事実を、大人が想像する以上に敏感に感じ取るからです。

