「人間、何もしない時間が長いと逆にキツくなるんですよ。朝起きてやることがなくて、二度寝して、昼から酒を飲む。そんなダメ人間みたいな生活に飽きてきます。しかも、僕の場合は、腰以外は健康な体なのに、お金がなくて身動きが取れないんです。精神を病んでいて動けない人や、身体的に働けない人なら生活保護が最適解でしょう。僕は少しは動けたので派遣でもいいからやり直そうとなりました。ただ、今の生活に限界がきたら、また生活保護に戻るのも選択肢のひとつです」
現在の戸田は生活保護とそれほど変わらない収入だが、自ら稼いだお金があれば自由が手に入る。毎日、好きな焼酎を家飲みしているし、趣味のパソコンでMAD動画を作ることもある。割に合わない仕事や厳しい条件の仕事は断ることができる。ささやかでも、戸田には誇るべき生活がある。
「やり直しがきく」のは30代まで
戸田は、日払い派遣の仕事を続けながらも、正社員になろうとしなかったわけではない。高校卒業時には公務員試験やゲーム会社の就職試験も受け、その後も機会があれば会社に応募を続けていた。
「日払い派遣をしながらも面接を受けるなり、応募はしていました。でも、だいたい書類で落ちましたね」
取材中の戸田には話し下手な印象はない。自己分析や課題の言語化もできる。
「そうは言われても、正社員経験がない人間は、成功経験が少ないので、自己評価が低くなりやすいと思います。契約社員どまりだと、自分はあぶれものみたいな意識があります。正社員になることは、例えるなら大学合格です。世間に認められているじゃないですか」
たしかに、著者は戸田と同世代の氷河期世代だ。大学卒業後、受けても受けても就職先は決まらなかった。
「そうなんです。新卒カードを失って、その後も景気は回復しませんでした。人数は多くて、切り捨てられた世代です。どんな年齢でもやり直しはきくといいますが、せめて30代ですよ。49歳なんて、仕事でも結婚でも、厳しさしかないです。実際、この歳では詰んでいます」
結婚の話題が出たので、戸田の女性関係について聞いてみた。学生のころは女性が苦手だったそうだ。

