フジテレビジョン

それって、ホンマでっか?
フジテレビの「FOD」が今、好調な理由。
FOD事業執行責任者、野村氏に聞く

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――コンテンツのラインアップについて工夫はありますか。

野村 FODのコンテンツはフジテレビの番組にこだわらず調達しており、例えば、東映の『仁義なき戦い』なども配信しています。視聴属性として興味深いのは、地方の高齢者の方々がタブレットを多く利用していることです。実はタブレットの普及率は地方のほうが高いのです。そのため、その層を狙って時代劇の『鬼平犯科帳』なども有料会員特典として見放題で配信しています。さらにHuluさんから人気テレビドラマ『ウォーキング・デッド』を調達するなど、月額300円(税抜)から視聴できる日本一オトクなSVODを目指しています。

デジタルビジネスでも大事なのは
クリエイターのパッション

――テレビ局がデジタルビジネスを行なううえでの課題と強みとは何でしょうか。

野村 デジタルビジネスなら何でもいいというわけではなく、それぞれに強いデジタルビジネスがあり、それが私たちは動画だったということです。言うまでなくテレビ局は、アーカイヴも含めて、コンテンツを多数持っているうえ、24時間365日コンテンツを毎日つくり続けており、それが大きな財産と言えます。

その意味では、いくらデジタル時代が来たとはいえ、コンテンツをつくり出すクリエイターは、ひたすら良い作品をつくることに注力したほうがいい。そして、それをきちんとお金にしていくのが、プロデューサーであり、私たちのようなビジネス部門なのです。

デジタルビジネスのために、あまりにもターゲットを意識し過ぎては良いコンテンツはできません。クリエイターに重要なのはパッションです。彼らが本当につくりたいものをつくらせることが、テレビ局で最も大事な部分だと思っています。

――情報番組やドラマをデジタルでどのように活かしていくのでしょうか。

野村 コンテンツには大きく分けて、フローコンテンツとストックコンテンツがあります。フローコンテンツはニュースやスポーツ、情報番組であり、ストックコンテンツはドラマや映画となりますが、このストックコンテンツをいかに大量にラインナップできるかが重要になってきます。一方でフローコンテンツは、よりテレビ寄りの戦略となりますが、基本的には動画配信もフローとストックのバランスが重要だと考えています。

電子書籍は15万冊規模
スタート2カ月で黒字化

――独自性に電子書籍(コミック、マガジン)を拡充する理由とは?

野村 今のベストセラー書籍はアニメ化・ドラマ化されたことでさらにヒットしています。『進撃の巨人』『半沢直樹』しかりです。しかし、これをテレビ局として考えると、視聴率がすべてであって、それ以外、何のメリットもありません。

そのため、約2年の準備期間を経て15年2月に電子書籍に進出しました。ただ、電子書籍市場は既に完全なレッドオーシャン(競争の激しい既存市場)です。私たちもこれまでフジテレビBOOKSをやっていたのですが、鳴かず飛ばずの状態でした。そこで、これをFODの中で再構築することで、有料会員80万人に利用してもらうことにしたのです。

重要なことは、今、動画はレンタルが中心だということです。それが意味するところは、単価が安いということです。例えば、1時間番組ドラマ1本、1週間300円という売り方をしていますが、電子コミックはレンタルではなく購入が中心であり、1冊あたり400~500円が中心です。私の消費感覚だと15分あれば1冊読めます。つまり、1時間300円のドラマと15分400~500円のコミックでは、コミックのほうが、時間単価が高いわけです。

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