それって、ホンマでっか?
フジテレビの「FOD」が今、好調な理由。
FOD事業執行責任者、野村氏に聞く
そこでFODは、2012年4月に定額制のTVOD、つまり月額会員制を導入することにしたのです。その結果、長期の収支予測を立てられるようになり、コンテンツ投資や販促も計画的にできるようになりました。
さらに、FODでは2012年4月からスマホ対応をしているのですが、それ以前からいち早くスマホに注目し、経営資源の殆どをスマホに投じたことが功を奏したと思っています。
というのも、テレビ局の人は、大画面信仰があり、画面に対する強いこだわりがあります。社内でも当初はなかなか理解を得られませんでした。でも、そこにこだわると、従来のテレビと何も変わらない。私たちは、観たいときにいつでも観られるスマホを重視することで、テレビ以外のユーザーにリーチすることを最優先してきたのです。
FODの現在のPC向けのUI(ユーザーインターフェイス)は、もともとタブレット用に最適化したものです。通常なら、PC向け、タブレット向け、スマホ向けと分けているのですが、FODはタブレットとスマホのUIしかなく、タブレット用をPCに適用しているのです。
――現在のPCとモバイルの割合ほか、モバイル時代に向けた取り組みはいかがですか。
野村 FODへのアクセスの7割はモバイル(スマホ6割、タブレット1割)になっています。したがって、UIの組み立ては、「スマホ、タブレットをどうするのか」というところから始まっています。実は、そこでは複数のサービスをワンプラットフォームでスピーディーに実現するために、アプリではなく、ウェブブラウザを中心に組み立てています。
FODではオリジナルコンテンツもいくつか制作しているのですが、そちらはスマホで観ることを前提に短尺ものを中心に展開していきたいと思っています。無料キャッチアップサービス「プラスセブン」のスマホ平均視聴時間は現在約30分。例えば、ユーチューブなら数分ですから、この時間の長さを表す意味は非常に大きい。つまりスマホで30分間、私たちのコンテンツで画面を占有できていることになるので、その広告価値は計り知れないものがあると思っています。
女性比率が高いFOD
独自の視聴属性の構築も
野村 世代全体のバランスはよく、中心は20代、30代、40代の男女です。面白いのは、インターネット全般の属性と比較しても、女性の比率が高いことです。とくに電子書籍のコミックについては、その傾向がより鮮明に出ています。
そのため、コミックのトップページを意図的に女性向けの人気作品を多く並べています。さらにユーザー属性のアンケートをとることで、将来的には、そのデータをもとに広告の出し分けなどもやっていきたいと思っています。
さらに私たちは今、プラスセブンでは視聴率だけでなく全数調査も行っています。それはF1(20~34歳の女性)、M1(20~34歳の男性)といった属性だけではなく、新しい視聴属性の出し方の可能性を見出すためです。これはインターネットだからできることです。広告業界では「M1はどこにいるのか」とよく言われていますが、私たちは新しいデータプラットフォームも自社で構築していきたいと考えています。