その学生たちは、生成AIが出力した内容を自らそしゃくしないまま、プレゼンに臨んでいたとみられる。渋谷氏によれば、昨年までは情報収集や分析など部分的な作業にAIを活用する学生が多かった。しかしAIの性能向上によって、今年はアウトプットまで一貫してAIに頼るチームが出てきたという。
「学生たちに悪意はありません。『AIの出力に自分が読めない言葉が混ざっているとは思わなかった』というのが、彼らの率直な感想でした。AIが急速に普及して今は教育での活用も過渡期ですから、適切な使い方を教わる機会もなかったのだと思います」
渋谷氏はこの学生たちを叱ることはなかった。学生自身も「さすがにこれはまずい」と感じている様子が見られ、3つのポイントを端的に伝えたという。
「AIの出力をそのまま使わないこと。例え内容が劣っても、自分が理解できる範囲のものを発表すること。発表練習をすること。この3点を伝え、AIはツールとして自分のコントロール可能な範囲で使い、アウトプットしたものには責任を持つ必要があると話しました」
すると、学生たちは自発的に修正作業に取りかかり、1週間後のプレゼンは見違えるほど立派なものになった。AIの出力を自分の中に落とし込み、理解できる言葉で語り直すことで、質疑応答にも対応できるようになったという。
渋谷氏は、この「失敗経験」こそが重要だと強調する。
「『AIは自分が理解できないものを出力する場合もある』という事実をまずは知ることが重要です。AIは常に正しいわけではなく、ファクトチェックも欠かせません。学生のうちなら失敗しても影響は限られますが、社会に出てから同じ失敗をすれば責任が伴い、顧客からの評価にも直結します。学生のうちにAIの落とし穴を知り、軌道修正まで経験しておくことが、社会に出たときの武器になるはずです」
従来の課題やテストで「理解度」は見抜けない
渋谷氏は今回の経験を通して、従来型の教育評価では見抜けない問題があることも痛感したという。
「ペーパーテストやレポート提出だけでは、学生たちが内容を理解しないままAIの出力を使っていることは見抜けません。今回の問題は、プレゼンという『相手がいる形』でアウトプットをさせ、質疑応答を行う場があったからこそ理解度が見えたのです。今後、テストや評価のあり方そのものを見直す必要があると強く感じました」

