AIブームは電力不足という課題に直面しており、ウォール街はその解決策を提供すると期待される電力企業に多額の資金を賭けている。一部の技術はなお開発途上にあるにもかかわらずだ。
今年に入って電力インフラとクリーンテクノロジー企業、少なくとも10社が新規株式公開(IPO)を実施した。地熱発電のファーボ・エナジーは上場初日の終値が、IPO価格比35%高と急伸した。
これら企業の今年の資金調達額はこれまでに116億ドル(約1兆8800億円)超と、同セクターで過去最高となっている。
ブルームバーグNEFの推計によれば、米国のデータセンターに必要な電力容量は2030年に77ギガワット超に膨らむ。2025年は41ギガワットだった。こうした需要拡大見通しを背景に、電力IPO市場は活況を呈している。
もっとも、この熱狂はリスクも伴う。イーロン・マスク氏が率いる宇宙・AI複合企業スペースXは、歴史的な上場を果たした後に株価が乱高下。高リスク・高リターンのクリーンエネルギー関連企業に投資する際の危うさを物語っている。
TDカウエンのマネジングディレクター、ジェフ・オズボーン氏は「勝者も一部に生まれるが、淘汰される企業も出てくるだろう」と話す。

潤沢な資金を持つメタ・プラットフォームズやアマゾン・ドット・コム、マイクロソフトといった企業が、リスクを許容して技術革新を後押しする姿勢を示し、こうした上場ラッシュを支えている。
ジェフリーズのアナリスト、ジュリアン・デュムランスミス氏はクリーンテクノロジー投資について、「今後もこうした動きはさらに広がり、その中心となるのはハイパースケーラー(大規模クラウド事業者)だ」と指摘した。
ファーボは自社の地熱発電技術がまだ商業規模に達していないが、5月に18億9000万ドルを調達した。
電力インフラを提供する企業も、こうした流れに乗っている。データセンター向け電気設備・システムを手掛けるフォージェント・パワー・ソリューションズは2月のIPO時に比べて、株価が2倍超になった。
データセンター向け冷却製品を販売するマディソン・エア・ソリューションズは、4月に22億3000万ドル規模のIPOを実施。工業分野の企業として約30年ぶりの大きさだった。

一方で、スペースXや今後予定されるOpenAI、アンソロピックなどの超大型IPOが投資家の資金を圧迫し、他の銘柄への投資余力を奪うとの懸念もある。
足元の株式相場下落は、AIに対する市場の期待が急速に変化する可能性も示している。
法律事務所ホワイト・アンド・ケースでグローバル資本市場部門の共同責任者を務めるジョン・ベッテリ氏によれば、IPOには厳格な審査やデューデリジェンス(適正審査)が伴うため、長く複雑な上場手続きの途中で苦戦する企業もある。
先進的な核技術企業であるディープ・フィッションは、6月に実施したIPOで4000万ドルを調達したが、当初目標としていた1億5600万ドルを大きく下回った。
それでも、IPOの流れは今後も続く見通しだ。先端的な原子炉向けの燃料メーカーであるスタンダード・ニュークリアなども上場を予定している。
投資会社アペイラ・キャピタル・アドバイザーズの創業マネジングパートナー、ナタリー・フアン氏は「AIの普及やインフラ整備にとって重要と見なされる企業へと、資金は集中している」と指摘した。
また、こうした次なるテーマ性のあるIPOが成功すれば、「より幅広い企業に対する投資家の信頼を高めることにつながる」と述べた。
--取材協力:Anthony Hughes.
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著者:Emily Forgash、Will Wade

