ただ、こうした大規模投資は、AIバブルのテックバブルとの違いとも認識されているだろう。「実需が大きい。テックバブルの時は、ただ株価が上昇しただけで、設備投資が巨額に出てくるということはなかった」と。
この点は、バブル上昇局面では、ポジティブに捉えられてきた。「ドットコム企業はバブルだが、AIはブームであり、本物だ」と。しかし、バブル崩壊局面では、実需の莫大な投資をしたことがあだになる。なぜなら、実際に物理的に投資してしまい、その無駄な設備は価値がまったくない、それどころか処分費用が発生するからだ。
個々の主体となった企業にも大打撃だが、経済全体、しかも実体経済全体には大打撃だ。この数年のマクロの設備投資のほとんどが無駄になってしまったのだ。戦争兵器に投資してしまったのと同じである。GDPとしてプラスだったが、経済における生産力の上昇と期待されたが、それが無駄になるということである。
「そんなことはない。AIは幅広く使える基盤技術だからむしろ逆だ」、という意見が大勢だろう。
違う。それを言うなら、ITバブルのほうがインターネット関連の基盤、まさにインフラを整備したから経済へのプラスは大きかった。AI投資のほとんどは、生成AI、大規模言語モデルのパラメータを改良するために使われてしまったのである。生成AIは残る。これはプラスだ。しかし、物理的に建てられたデータセンター、そのための半導体、各種装置、そのそばに建てられた発電、蓄電施設。邪魔なだけだ。これらはすべてもはや無駄である。投資ではなく、戦略的消費として過去のものになってしまうのである。
問題は、そのAIが、経済的に価値があるかどうか、にかかっている。社会にとっての価値は賛否両論あるだろう。しかし、いずれにせよ、経済的に収益を上げるのとは無関係になってしまい、株価が暴落するだけでなく、実体経済のGDP成長率トレンドの低下に大いに「貢献」するだろう。
テックバブル崩壊との「多くの共通点」とは
後は、この暴落局面をテクニカルに観察するだけだ。
そう考えると、テックバブルとの共通点がさらに増える。第1に、前述のように、ナスダック総合指数が2000年3月10日に史上最高値のピークをつけた直後、はっきりとした長期下落トレンドが始まった。今回も、26年6月に主要指数が史上最高値を世界中で更新した翌日以降に暴落が始まるのではないか。一時的に反転、乱高下となるかもしれないが、「あのとき下落トレンドははっきり始まった」と後日にはわかるだろう。歴史的なピークを付けた直後に崩壊するという点がそっくりだ。実は、1980年代日本株のバブル崩壊もまったく同じだ。1989年12月29日の大納会で史上最高値を付け、翌年の大発会から明確に暴落を始めた。
第2に、下落のきっかけが、ただの些細なニュースだ。2000年3月10日のニュースは誰も覚えていないが、今回の「有力候補」である26年6月23日のニュースも、数カ月後には誰も覚えていないだろう。きっかけと言われているのは、「韓国ショック」である。半導体企業SKハイニックスが、汎用メモリーからAIデータセンター向けに使う半導体への生産ラインへの転換を遅らせるなどの報道がひとつ。これでAI半導体、AIそのものへの収益性の疑問が出て、暴落が始まったというものだ。
もう1つは、韓国当局者が、シングルストックETF(上場投資信託)といわれているものの上場を認可したことを後悔しているといった趣旨の発言をしたことが報じられたことだという。つまり、SKハイニックスとサムスン電子でKOSPI(韓国総合株価指数)の50%以上のウェイトを占めるが、この2社の個別レバレッジETFが個人投資家のギャンブル的投資に使われ、これらの株価のボラテリティ(変動率)が、ETF認可後大幅上昇し、その結果KOSPIのボラティリティの大幅上昇ともなってしまったという。
しかし、前者は汎用の半導体に生産をかたむけたほうが利益率が高いと判断したわけで、全体の収益がむしろ好調であることを示しているし、後者の話も、当局が認可を撤回するわけでも、そんな動きがあるわけでもない。そして、アメリカのAI半導体株全体には、韓国株の規制が強化されたとしても、関係ない。
きっかけは韓国ショックだが、これが世界に広がったのは、その直前にアメリカ時間22日に、スペースXの多額の社債発行のニュースがあり、スペースXの株価が急落しただけでなく、AIビジネスの収益性への疑問が再燃したこと、また、すでに古いニュースとなっていたFRBのウォーシュ新議長により金融政策がタカ派に傾くことが改めて材料視されたりしたことなどの理由によるものだ。
これらの動きは、いつも同じである。バブルをあおっていた材料を、手のひらを返したように、悪材料と捉えなおす、何でもないニュースをもイベント化する。これは、投資センチメントが極端にナーバスになっていることを示しているのであり、バブル崩壊時の典型だ。今後、7月に入っても、市場のナーバスな乱高下は続くだろうが、はっきりと「終わりは始まった」のである(本編はここで終了です。この後は、競馬好きの筆者が競馬論や週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承ください)。

