たしかに、長机の受付に立つのは20代から30代の若手スタッフばかりだった。そこにやってきたシニア男性が「やぁ、〇〇さん、おはよう!」と孫に話しかけるように笑いかけた。
スタッフも「おはようございます! 今日も元気ですね」と満面の笑みで返す。まるで年の離れた親戚同士のような温かい空気が流れていた。
キャンパスのない大学
午前の一般教養講座を終えると、学生たちはそれぞれの選択科目講座のため別室に移動する。
実は、奈良シニア大学には「大学」と名が付いていても専用のキャンパスがない。行政が運営する施設を借り、活動しているのが現状だ。
筆者が訪れたホールの前には、ホワイトボードが置いてあり、そこには午後からの選択授業の開催場所や今後の予定がびっしりと貼り出されていた。よく見ると、奈良駅周辺のさまざまな施設名と部屋名が書かれている。 ホワイトボードを眺める矢澤さんは、こう本音をこぼした。
「皆さん、紙の世代なので、こうやって説明する方がわかりやすいんです。(授業を行う)場所探しが、私たち運営側が一番頭を抱えるところです。欲を言えば、決まった場所がほしい。切実に」
ランチ時間は、各自自由だ。奈良シニア大学では、奈良駅周辺の飲食店のいくつかと提携している。学生が首にぶら下げている学生証を見せると、割引してもらえるシステムがあり、店側からは「シニア大学さんですね」と認知されているという。観光地でもある奈良の町に、シニアの居場所が溶け込んでいるのだなと感じた。

