東洋経済オンラインとは
ライフ

なぜ"やせ薬"GLP-1は日本で批判されるのか メディアの偏向報道、専門医の縄張り意識…医師が明かす根本的な問題

9分で読める
GLP-1薬のオゼンピック
なぜ日本ではGLP-1薬は批判されるのでしょうか。その背景を解説します(写真:AP/アフロ)
  • 上 昌広 医療ガバナンス研究所理事長
2/5 PAGES
3/5 PAGES

現在の国際的コンセンサスは、「膵炎リスクの明確な増加を示す証拠はないが、既往歴のある患者や腹痛症状を呈する患者では、慎重な経過観察が必要」というものである。そういう意味では、日本のGLP-1薬報道は、あまりにもバランスを欠いている。

では、海外の報道はどうだろうか。

実はこの薬を単なる「やせ薬」ではなく、社会を変える可能性を持つ医療技術として、多面的に論じている例が多い。

例えば、イギリスの『エコノミスト』は2024年10月24日、「GLP-1薬は史上最も重要な創薬の1つ」との特集を掲載し、肥満だけでなく、心血管疾患や腎疾患、さらには依存症への可能性を論じている。ウォール・ストリート・ジャーナルも2024年1月8日に「オゼンピック(GLP-1薬の1つ)は飲酒問題を解決できるのか?」と題する記事で、アルコール依存症への効果に注目した。

最近では、社会や経済への影響も議論されている。ニューヨーク・タイムズは今年1月21日に「体重減少薬が航空業界にもたらす意外な利益」と題し、乗客の軽量化による燃料費削減効果を報じた。

前出のウォール・ストリート・ジャーナルも5月13日、「GLP-1薬利用者がレストラン業界を揺るがしている」と報じ、食事量の減少が外食産業の経営戦略を変えつつあると伝えた。これは、外食産業は利用者の食欲減退に合わせ、ミニバーガーや小サイズの酒類を提供するなど、ビジネスモデルの転換を始めているという内容で、日本の報道とはあまりにも対照的である。

利害関係者の思惑が影響も

なぜ日本ではこれほどまでにGLP-1薬への批判が強まるのか。筆者は利害関係者の思惑が影響していると考えている。

まず厚労省だ。日本は国民皆保険制度を維持しており、急速な高齢化に伴う医療費の増加が大きな課題となっている。GLP-1薬が広く普及すれば、薬剤費の増大は避けられない。厚労省にとってGLP-1薬の普及は脅威だ。

4/5 PAGES
5/5 PAGES

こちらの記事もおすすめ

あなたにおすすめ

ライフ

人気記事 HOT

※過去1ヶ月以内に配信した記事の閲覧数