若い世代だけとは言わないが、近年、宝くじへのネガティブな反応をよく目にする。
曰く、1等に当選する確率が低すぎるとか、売り上げの約半分しか賞金として還元されていないのは割が悪いとか、そういうものを長蛇の列に並んでまで買うのは時間の浪費でしかないとか。つまり経済合理性が低すぎるので、お金リテラシーの高い人間は宝くじを買わない、というディスりの対象となっている。
たしかに、確率的には相当難しいだろう。「プレミアム」の1等(8億円)は4000万枚に4本、つまり1000万枚に1枚だ。前後賞を合わせて狙うなら10枚セットで買う人が多いと思うので、その確率は……と計算しようとしたがすぐに挫折して、手っ取り早くAIに聞いてみた。
プレミアムが今後、年2回発売されるとして、毎回10枚ずつ買った場合、10年買って12億円が当たる確率は約5万分の1、30年で1.6万分の1だそうだ(ただしAIは計算が適当らしいので、話半分に読んでいただきたい)。
しかも、これまでのジャンボと異なり、プレミアム1枚は500円なので、10枚買うと5000円がかかる。5000円を年2回、10年買い続けると10万円、30年では30万円になり、「これなら投資に回したほうがムダにならない」と言われそうだ。そんな「常識」が若者たちの間に広まったせいか、宝くじを買う行為そのものが「愚かな選択」と思われるようになったのも、人気凋落の一因かもしれない。
1回5000円は投資? それともエンタメ費?
いや、ちょっと待ってほしい。「もし、12億円が当たったら」と、いったん考えてみよう。
あなたは何をしたいだろうか。今どき1億円では都心のマンションも買えないが、その12倍もの金額だ。使いではある。
これだけの資産が手に入ったら、ストレスのたまる仕事を続ける必要はない。節約しながら投資に邁進せずとも即時にFIREできるし、シン富裕層の仲間入りだ。住宅ローンがあっても、1億円も使えば即完済できるだろう。
さらに、もう1億円使って、高級時計でもブランド品でも別荘でも欲しかったモノを買えばいい。それでもまだ10億円残っている。考えただけでウキウキする。さあ、何をして楽しもうか?
そう、12億円もの賞金が手に入るかもしれない宝くじは、このように妄想して楽しむためのものだ。競馬やパチンコのように、「賭けた分を取り返そう」と考えてしまうのは、リターン金額が現実的だからだ。12億円なんて非現実的な数字を見れば、もはやそれは100%エンタメに変わる。何でも叶う魔法を手に入れた気分を、5000円で味わうことができるのだから、それはエンタメ代なのだ。
推しのイベント代だって、今どき5000円以上かかるものが多いだろう。映画は2時間で2200円だが、宝くじは買ってから抽選日までの日数をたっぷり楽しめる。あなたはエンタメを十分楽しんだ後、「では、さっき払った代金を返せ」とは言わないだろう。
宝くじに払うお金は、賞金を求めてではなく、とびきり幸せな人生を妄想する時間に対しての対価と考えればいい。

