いまや「北九州のソウルフード」とも呼ばれる資さんうどん。山内社長はここで約20年、店長から本社での人事や教育、店舗開発、最後は役員として営業を統括してきた。事業譲渡も3、4回経験している。そのたびに、社員や客が何に不安を抱くのかを間近で見てきた。
「スタッフもお客様も一番嫌なのは、やっぱり『味が変わること』なんです」
東筑軒で真っ先に味を守ったのは、その経験があったからだ。思い入れのあった資さんでは親会社が変わり、会社の向かう先と自分の思いとが、少しずつ離れていくようにも感じた。
「せっかくチャンスをいただけるなら、自分が実践してみようって。お客様と目線を合わせて、お客様に還元する仕組みをもう1回自分が作り上げる」
9期連続赤字の老舗を1からではなく、0から立て直す。声をかけられて半年考えた末、覚悟を決めた。
目指すは福岡のソウルフード
取材の終盤、山内社長の口から意外な言葉が出てきた。
「かしわめしを、まだソウルフードとは呼べないんです」
折尾の代名詞のようにも感じていた、かしわめしなのに?
「運動会、お正月、法事――晴れの日にしか、使われていない。日常で食べるものに、なっていないんです。もっと気軽に、毎日でも手が届く一杯にしたい」
店でのかしわめしは一杯290円だが、かしわめし弁当の大は970円だ。「地元の人から見れば、決して安くはない」と渋い表情を浮かべる。500円ほどで買える、小さめの弁当を開発していると語った。
もうひとつ、社長が悔しそうに語った場面がある。
「『コンビニ弁当の普及で負けた』みたいに記事に書かれるんです。それが嫌で。ならばコンビニに勝てばいい」
そこから生まれたのが、おにぎりと唐揚げがひとつずつ入って200円の、「おにから」だった。折尾駅構内で売り出すと好評で、午前中で売り切れることも多いという。当初200個作っていたが、数カ月で500個作るようになった。
「関西でも関東でも勝負できると思うんです。『おにから』で東筑軒の名と味を知ってもらって、店を出していく。絶対、おいしいんですから。世の中に広めたい」

