そこで、折尾駅前のうどん店をこのたびリニューアルしてオープンしたのがロードサイドモデル1号店。立ち食いコーナーは残しつつ、広い通路にテーブル席や向かい合わせのソファ席を設けた。車椅子で入れるトイレにもこだわった。
「味は、変えていません。変えたのは、届ける形です」
座ってゆっくり食べられる席は、店を訪れる客層を広げた。広報の浅田夏枝さんは言う。
「足腰の悪い方も、来てくださるようになったんです。車椅子のお客様も通路が広いので、そのまま入ってこられる。すごく、うれしいですね」
客層は時間帯によっても変わる。午前はひとり客、昼は女性のグループ、午後は学生も立ち寄る。座れる席ができて、女性客が増えたという。
メニューにも、山内社長のこだわりは表れている。看板のかしわめしは一杯290円(税込み、以下同)。どのメニューも1000円を超えないようにした。「誰もが、日常的に使える店にしたい」と山内社長。
オープンから1カ月、折尾本店の売り上げは目標の1.5倍を超えた。リニューアル前のうどん店の5倍を売り上げているという。「駅弁から、地域の食堂へ」。手応えは上々だと笑顔を見せる。
「僕が知ってる、かしわめしじゃない」
届ける形を変えた一方で、変えないと固く決めているものがある。
「守るべきは絶対に、味と文化です」
山内社長はキッパリと言い切る。客に「東筑軒ってどんなイメージ?」と聞くと、出てくる言葉はこの3つだという。
「立ち売り、立ち食い、かしわめし」
「この3つは、絶対に変えちゃいけないと思っているんです」
社長や代表になると自分の色を出したくなる。でもその色が強すぎると、働く人も客も離れていく。だからこそ、企業が守ってきたものには、手をつけないと決めている。
2025年3月より、東筑軒は米の価格高騰を受けて、かしわめしのご飯に大麦を1割ほど混ぜていた。まだ社長になる前、ひとりの客としてかしわめしを食べた時、違和感を覚えたという。
「僕が知ってるかしわめしじゃないじゃん、って。もっと熱烈なファンは、絶対にこの味の変化に気づいている。僕の後ろには、たくさんのお客さんがいるんです」

