東洋経済オンラインとは
ライフ #サオリス・ユーフラテスの数字の向こう側

「僕が知ってるかしわめしじゃない」…9期連続赤字の老舗駅弁会社で"資さん出身"の新社長がまず《味を戻した》深い訳

11分で読める
東筑軒の外観
名物駅弁「かしわめし」で知られる老舗「東筑軒」に今、変化が起きている(写真:筆者撮影)
2/6 PAGES

そこで、折尾駅前のうどん店をこのたびリニューアルしてオープンしたのがロードサイドモデル1号店。立ち食いコーナーは残しつつ、広い通路にテーブル席や向かい合わせのソファ席を設けた。車椅子で入れるトイレにもこだわった。

広々としたソファ席(写真:筆者撮影)

「味は、変えていません。変えたのは、届ける形です」

座ってゆっくり食べられる席は、店を訪れる客層を広げた。広報の浅田夏枝さんは言う。

「足腰の悪い方も、来てくださるようになったんです。車椅子のお客様も通路が広いので、そのまま入ってこられる。すごく、うれしいですね」

客層は時間帯によっても変わる。午前はひとり客、昼は女性のグループ、午後は学生も立ち寄る。座れる席ができて、女性客が増えたという。

新しくなった折尾本店のメニュー。かしわうどん410円。ワンコインでお釣りがくるのがうれしい(写真:筆者撮影)

メニューにも、山内社長のこだわりは表れている。看板のかしわめしは一杯290円(税込み、以下同)。どのメニューも1000円を超えないようにした。「誰もが、日常的に使える店にしたい」と山内社長。

オープンから1カ月、折尾本店の売り上げは目標の1.5倍を超えた。リニューアル前のうどん店の5倍を売り上げているという。「駅弁から、地域の食堂へ」。手応えは上々だと笑顔を見せる。

「僕が知ってる、かしわめしじゃない」

届ける形を変えた一方で、変えないと固く決めているものがある。

「守るべきは絶対に、味と文化です」

山内社長はキッパリと言い切る。客に「東筑軒ってどんなイメージ?」と聞くと、出てくる言葉はこの3つだという。

「立ち売り、立ち食い、かしわめし」

「この3つは、絶対に変えちゃいけないと思っているんです」

山内裕太社長(写真:筆者撮影)

社長や代表になると自分の色を出したくなる。でもその色が強すぎると、働く人も客も離れていく。だからこそ、企業が守ってきたものには、手をつけないと決めている。

2025年3月より、東筑軒は米の価格高騰を受けて、かしわめしのご飯に大麦を1割ほど混ぜていた。まだ社長になる前、ひとりの客としてかしわめしを食べた時、違和感を覚えたという。

「僕が知ってるかしわめしじゃないじゃん、って。もっと熱烈なファンは、絶対にこの味の変化に気づいている。僕の後ろには、たくさんのお客さんがいるんです」

3/6 PAGES
4/6 PAGES
5/6 PAGES
6/6 PAGES

こちらの記事もおすすめ

あなたにおすすめ

ライフ

人気記事 HOT

※過去1ヶ月以内に配信した記事の閲覧数