箸を入れると、ご飯がふっくらとほぐれる。海苔の香ばしい香りが、ふわりと立ちのぼる。かしわとご飯をのせて、口へ運ぶ。温かいぶん、炊き込みご飯のほのかな甘みが、いっそうはっきりと感じられる。卵は空気を含んだようにふんわりと軽く、パリッとした海苔とのコントラストが、口のなかをにぎやかにする。
かしわめしの器は、福岡で350年の歴史を持つ小石原焼だ。ずっしりと重く、収まりのいい器は、ご飯の温かさを手に伝えてくれる。この器も一杯290円のかしわめしを、特別なものにしているように感じた。
広報の浅田さんが、ご飯を炊く調理スタッフの言葉を教えてくれた。
「うまく炊けたときは、食べ終わったあとに卵かけご飯のような後味が残る」
それを聞いてまたひと口味わう。醤油のコクと甘みにまろやかな卵があわさる。舌に残る余韻がおいしい。かしわとご飯、卵とかしわ、海苔とかしわ。組み合わせを変えるたびに、食感も味わいも少しずつ変わる。自分の好きな組み合わせを探すのも楽しい。気づけば、器は空になっていた。
かしわめしは九州の郷土料理で、福岡では家庭やコンビニ、お弁当でもよく登場する定番メニューだ。しかし、ここのかしわめしはどこか違う。「東筑軒のかしわめし」なのだ。この味は、どこから来ているのか。
まず、特徴的なのはかしわだ。そぼろのようなひき肉ではなく包丁で刻まれた肉は、噛むほどに旨みを感じる。時々ごろっとした塊に当たりラッキーを噛みしめる。そして、「鶏肉よりもご飯がうまい」と言われる炊き込みご飯。味付けは、1921年から代々受け継がれてきた秘伝だという。
「本社工場の2階には、『㊙門外不出』と貼り紙のされた部屋があるんですよ。まだ社長も入れてもらえてないそうです」と浅田さんは言う。
秘伝の味付けを仕込む部屋に入れるのは、限られた人だけなのだ。
店内には12種類の薬味も!
なお、かしわめしとうどんはセットで頼む人も多い。このうどんの味はどうだろうか?

