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G7サミットで「賭け」に勝ったウクライナと「モスクワ戦災」に怯え始めたロシア…両国の攻防は今どうなっているのか

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G7サミットを前にした6月7日、ロンドンで会談した首脳たち。左からドイツのメルツ首相、ウクライナのゼレンスキー大統領、イギリスのスターマー首相、フランスのマクロン大統領(写真:ブルームバーグ)
  • 吉田 成之 新聞通信調査会理事、共同通信ロシア・東欧ファイル編集長
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攻勢はロシア領土や占領地に及ぶが、プーチンにとって最も深刻なのは、①クリミア半島に対するウクライナ軍による補給路遮断作戦の進展、②モスクワに対する長距離ドローン・ミサイルによる大規模な波状的攻撃だ。

① のクリミアは、2022年のウクライナ侵攻の前段階として、14年に違法に併合されている。プーチンにとって、クリミアは「常に戦争に勝利する指導者」として国民から80%以上の熱狂的支持率を獲得した栄光の地だ。

しかし、「欧米と組んで最新兵器を整えたウクライナ軍に押されるプーチン大統領の次なる一手」で筆者が紹介したように、ウクライナ軍は5月、ロシア南部からウクライナ南部の占領地を通ってクリミアに至る陸上回廊(R280号線)を、ウクライナ軍用語で言う「砲火統制下」に部分的に置いた。

これは回廊を走るトラックを、ドローンで容易に攻撃できる状態になったことを指す。この結果、ロシア本土からの軍事物資や生活用品の補給が大幅に削減され、クリミアではガソリンなど燃料不足が深刻化している。すでに、ウクライナ南部とクリミア西側を結ぶ5本ある橋の一部は破壊されていた。さらにクリミア東部とロシア本土を結ぶクリミア大橋(長さ約19キロ)も、たびたびの攻撃を受け、燃料などの重い物資の輸送はできなない「片肺」状態になっている。

ウクライナはその気になれば、最近実戦配備した長距離巡航ミサイルなどでクリミア大橋を攻撃し、通行不能にすることが可能であるとみられる。ただ、居住するロシア国籍の住民を、大橋を通ってロシア本土に移住させるため、当面の間は、大橋を破壊しないと言われている。

ウクライナは年内にクリミアへの上陸作戦を開始か?

一方で、ウクライナ部隊が年内にクリミアに上陸作戦を行うのではないかとの見方も出始めた。

いずれにしても、現在数万人規模といわれる駐留ロシア軍部隊が一部でもロシア本土に撤退することになれば、プーチンの政治的メンツは丸つぶれになろう。

② のモスクワへの波状的ドローン攻撃は、クレムリンにとって、政治的にはクリミア以上に深刻だ。攻撃を受けた首都南東部にあるカポトニャ製油所は市内最大級の精油工場。クレムリンから約15キロしか離れていない。モスクワ用のガソリンの約40%を供給しており、死活的に重要なエネルギー施設だ。

モスクワへのドローン攻撃としては過去最大で、付近の上空は巨大な黒煙で覆われた。市民は首都が「戦場」と化しつつあることを実感しただろう。この精油施設は2日前にもドローン攻撃を受けたばかり。ロシア軍の防空システムは多くのドローンを撃墜したものの、多数のドローンを投入する攻撃を2回とも防げなかったことになる。

このため今回の攻撃は、クレムリンにとって大きなショックだった。プーチンは5月9日の対独戦勝記念日前に起きた首都などへのウクライナのドローンを迎撃できなかったとして、防空の責任者である航空宇宙軍総司令官を交代させたばかりだ。それでも次のドローン攻撃を防げなかった。ロシア軍の防空システムの能力ではウクライナのドローンを完全には迎撃できないことが証明された形だ。

このため、これまで「国父」として25年以上君臨してきた、プーチンの大統領としての権威は大きく傷ついた。モスクワでは軍の迎撃態勢は信用できないとして、大企業などが自社ビル屋上に自前の防空システムを設置する動きも出ているほどだ。

このモスクワの防空問題は、さらに非常に深刻な、それも緊急な対応を要する懸案になっている。なぜか。

モスクワが戦火に巻き込まれる現実性

モスクワへのドローン攻撃の直前、キーウにある世界遺産のペチェールシク大修道院がロシアのドローン攻撃で被害を受けた。これに対し、ゼレンスキーはこの攻撃への報復を表明したからだ。ウクライナがモスクワのどの歴史的建造物を報復攻撃の標的にするのか。さまざまな憶測がモスクワで飛び交っている。

こうしたウクライナによる首都攻撃への懸念が高まっている背景には、年末までにウクライナが初の長距離弾道ミサイルを開発し、配備するとの情報がある。このミサイルが配備されれば、モスクワの代表的政府施設が最初の標的になるのではないか、とロシアは警戒しているのだ。

具体的にどこを攻撃するかは別にして、ゼレンスキーとしては、強力な弾道ミサイルでモスクワに大きなダメージを与えることで、侵攻を続けているプーチンの気持ちを折り、和平交渉のテーブルに着かせることを狙っているものとみられる。

今年に入ってから新型ドローンを投入して、戦況を有利に進めるウクライナだが、ゼレンスキーによる「力による平和」路線が顕在化しつつある。

最後に日ロ関係をめぐる最近の高市政権の動きについて触れたい。

上記したように、今回のエビアン・サミットは、ロシアの戦争経済への圧力強化の一環として、対ロ経済制裁を強化すると宣言した。ロシアの主力輸出品である石油・ガスも当然含まれた。日本も当然支持した。

しかし、サミット直前の5月末、日本政府は不可解な動きを見せていた。経済産業省と外務省の両幹部が経団連役員とともに「経済訪問団」として、制裁下のロシアを訪問し、ロシアの経済発展省や産業貿易省の担当者と面会したのだ。

日本政府は表向き「困難な状況にあるときこそ意思疎通は重要だ」(茂木敏充外務相)と説明する、しかし、これは表向きの話であろう。実際はイラン戦争の終結が見えず、石油価格が高騰する中、中東に依存する石油の調達先をロシアに広げる可能性を念頭に、感触を探りに行ったとみられている。この訪ロに対しては、産業界は消極的だったが、官邸が主導で行った。

日本政府の優柔不断な動きをロシアは突くのか

この代表団の訪ロの前にモスクワ入りした自民党の鈴木宗男参院議員に対し、ロシア側は日ロ外相会談開催の可能性について、日本が敵対的な対ロ政策を放棄することが条件との立場を示したという。クレムリンからすれば、日本はG7の中で対ロ包囲網から離脱する可能性のある「弱い環」と映っているのだろう。

こうした高市政権の動きについては、欧州の複数の国から日本側に問い合わせが寄せられたと言われている。今回のエビアン・サミットで、高市早苗首相がこの日本側の動きについて説明したかは現時点で不明だ。

しかし、結果的に今回のサミット期間中、高市首相とゼレンスキーとの一対一の首脳会談はなかった。不可解な話だ。日本側は実現に後ろ向きだったといわれているが、真相は執筆時点では不明だ。

いずれにしても、ロシアが軍事的にウクライナに追い込まれつつある今こそ、G7や同志国がウクライナとともに連携を強めて、プーチンに侵攻継続を断念させる好機である。日本政府はG7だけでなく、同志国との団結を守りながら、対ロ関係で毅然とした立場を堅持する時だ。ロシアへのすり寄りはやめるべきだ。

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