賢く生まれたという「ギフト」が、ときに親御さんの過剰な期待のスイッチを押してしまい、結果として子ども本人を苦しめてしまうことがあるのです。
ゴールがない…
さらに難しいのは、こうした親御さんの場合、東大合格はゴールにならない、という点です。
普通に考えれば、子どもを東大に入れたいという親御さんの夢は、合格通知が届いた瞬間に達成されるはずです。しかし、長年「子どもを東大に入れる」という目標で動いてきた親御さんは、そのモードを簡単には解除できないことがあります。東大に入った後も、履修する授業、所属するサークル、アルバイト先、果ては交際相手にまで、ガンガンに口を出してくる――。そんなご家庭の話を、僕は何度も耳にしてきました。
子どもの側からすれば、東大合格まで親の期待に応えてきた以上、その後も「自分の意志で別の道に進む」という選択肢は、なかなか取りづらくなります。親御さんも、長年の「総力戦」の成功体験があるぶん、自分のやり方を変えづらい。
そうして、子どもが大学生になっても、社会人になっても、親御さんの介入は続いていきます。そうしてその介入を嫌って親元を離れたとしても、ある意味でその「後遺症」は続き、自分で何かを考えたりするのが苦手で進路選択に対して大きなストレスを感じ、結果うつ病になってしまうケースが多いです。
こうした親御さんは、近年「ヘリコプターペアレント」と呼ばれるようになりました。子どもの上空を旋回するヘリコプターのように、子どもの生活や教育、進路に過度に関与し続ける親、という意味です。アメリカで生まれた言葉ですが、日本でも教育投資の過熱の中で、似たような構造が確実に広がっています。
ヘリコプターペアレントの問題は、親御さんに悪意があるわけではない、という点にあります。むしろ「子どものために」という善意から来ているからこそ、子どもの側もそれを拒みづらく、親御さんも自分のやっていることが過剰だと気づきにくい。そうして、子どもがいい大人になってもなお、親御さんの「監視」が続いていくのです。
ここでふと、僕は感じることがあります。それは、こうしたケースの場合、子どもは親御さんにとってある種の「作品」になってしまっているのではないか、ということです。

