預金と貸し出しを伸ばし、快進撃を続けてきたネット銀行。だが、その成長モデルに異変が起きている。
「かつては住宅ローン市場で、住信SBIネット銀行とauじぶん銀行が首位争いをしていたが、いまはその面影すらない」
そう話すのは、住宅ローンの診断サービスなどを展開するMFSの取締役で、住宅ローンアナリストの塩澤崇氏だ。マイナス金利時代には低金利を武器に、この2行が住宅ローンの実行額を牽引していた。
しかし最近は、三菱UFJ銀行やりそな銀行、SBI新生銀行といった店舗網を持つ銀行勢に押され、MFSが運営する住宅ローン金利比較サイト「モゲチェック」を見ても順位で後れを取っている。住信SBIネット銀行に至っては直販の商品を掲載さえしていない(代理店経由の店舗型商品は掲載)。
業界関係者は「(2行は)貸し出しにブレーキをかけざるをえなくなり、マーケティングを抑制している」と解説する。
破竹の勢いだったネット銀行が、なぜ住宅ローン市場で影を潜めたのか。その理由は、貸し出し拡大を支えてきた資金調達手段を失おうとしているからだ。
逆回転する「成長エンジン」
大手ネット銀行はこの4~5年でバランスシートを急拡大させたが、その"元手"は預金だけではない。日本銀行が2013年に開始した「貸出増加支援資金」を、もう1つの成長エンジンとしてきた。
この資金は、デフレ脱却に向けて金融機関の積極的な貸し出しを企図したもので、貸出残高の増加額の2倍までの資金を日銀から借りることができるというものだった。
しかも、「金利は0%(16年3月~24年6月実施分)で借入期間は最長4年、貸出残高が維持されていれば全額借り換え可能」という破格の条件だったため、預金基盤が脆弱な金融機関にとっては強力な調達手段になっていた。
とりわけ住宅ローン残高を伸ばしていたネット銀行にとって、この制度の意味は大きかった。預金の増加ペースを上回って住宅ローンを積み上げても、貸出増加支援資金を活用すればバランスシートを膨らませることができる。このサイクルこそが、ネット銀行の住宅ローン攻勢を支えた立役者といえた。
実際、auじぶん銀行は23年3月期から26年3月期にかけて預金残高の増加額が約3兆円だったのに対し、借用金残高の増加額は約2兆円に上っている。
ところが、その成長エンジンが逆回転し始めた。
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