窪田:そのお話を聞いて思い出したことがあります。日本語が驚くほど流暢なアメリカ人の学生がいたんですが、彼は日本に行ったこともないのに、読み書きも完璧にこなしていました。
西村:それはすごいですね。どんな学習をしていたんでしょう?
窪田:言語学の先生に聞いたら、「その子ができる範囲の、ほんの少し先の課題」を与え続けていたそうなんです。達成できる喜びを感じられる「少し難しい課題」を継続的に与えることが、子どもを伸ばすカギなんだと改めて感じました。
西村:個別指導の本質はまさにそこですね。集団指導ではどうしても「分かった気にさせる」ことが中心になってしまう。だからこそ私は、子どもが「自分で気づく瞬間」をつくるために個別の関わりに移行しました。
机に向かっていない時間の過ごし方
窪田:成績が伸びる子は「机に向かっている時間」以外の過ごし方に、何か共通点はありますか?
西村:外遊びをよくする子は多いですね。そして、もっと顕著なのは「家庭の中でよくおしゃべりをしているかどうか」です。
窪田:会話の多い家庭の子は伸びやすい、ということでしょうか?
西村:はっきりとそう感じます。伸びる子は、とにかく「なんで?」「どうして?」と質問が多い。人間は「自分の発言」によって記憶が定着することが多いので、家庭内で会話が多いことは学力にも直結します。
窪田:それは面白いですね。話すことで、自分の理解が整理されるんでしょうね。
西村:そうです。お手伝いも同じです。たとえば食事前にお皿を並べるという作業でも、子どもは「完成形をイメージして配置する」という思考を自然と使っています。こうした「生活の中で考える経験」を積んでいる子は、やはり伸びやすいですね。
窪田:ところが近頃は、そういった経験が減っていますよね。
西村:非常に減っています。窓を開ける、洗濯物を干す、料理を手伝う――そうした身体感覚を使う経験が少ないと、生活知識が育ちにくい。この「身体感覚の不足」が、意外と学力にも影響するんです。


