「気象病」なんて名前を知りもしない80歳過ぎの父親から「調子が悪い」と連絡があるのは決まって低気圧の日だ。なので、親子揃そろってグッタリしているというわけ。繊細な人は昔からずっとこれをやっていたのかと思うと不憫でならない。
ほうほうのテイで帰宅し、ベッドにもソファにもたどり着けぬまま床に寝転んで1時間以上経っただろうか。喉も乾いたしトイレにも行きたい。でも、動けない。あー重い。すべてが重いし面倒くさい。あとどれくらいこうしていれば、私は起き上がれるのかしら。
もう秋なのに、生ごみは全部捨てたはずなのに、飲み終わったペットボトルもすべて中を洗ってあるのに、なぜかコバエが頭の上を飛んでいる。あーもうどうしたらいいの。
妄想でマンハッタンにいる私
私がなにをしたっていうの。目を閉じるしか選択肢がない。
頭のなかで少し妄想をする。妄想は心が傷ついていないときなら、たいていできる。安上がりだし配慮もいらない。あちらを立てればこちらが立たずなんてことを、一切考えなくてもよいところが最高だ。
今日はマンハッタンで暮らしながら、そこそこ人生うまくいっている自分を妄想した。妄想のなかの私はスタイル抜群で、長い脚をバッチリ出したショートパンツにちょっとおへそが出たトップスを着ている。ベッドの上でパイントサイズのアイスクリームを食べている。
もちろん、抱えた容器に直接スプーンをぶっ刺して。しかも、妄想のなかの私は小食なうえになんでもすぐ飽きてしまうので、二口くらい食べたらすぐに冷凍庫に仕舞ってしまうのだ。現実ではありえない。
友だちから連絡が来て、スリムジーンズをはいて街に出る。
マンハッタンには特に詳しくないので、私は頭のなかのイメージ・トライベッカを歩く。大きなサイズのコーヒーを買って歩きながら飲む。とりあえず大きければだいたいニューヨークな感じになる。本屋に行って、友だちとしゃべって、妄想のなかでも家に帰ってきた。

