りえさんの夫には、キャパシティ以上の仕事を受けてしまうなんらかの理由があるはずだ。パートナーからの助け舟に、「実は……」と心のうちを話す選択だってあった。なのに、自分で自分の心に掛けている負荷をないものとし、おかしいのはりえさんのほうだと責任転嫁のようなことをした。りえさんに対する敬意がまるでない。
「基本的にはいい人なんだけどさあ、身内になればなるほどぞんざいな扱いをしてくるところも、ややあるんだよね。結婚しなきゃわかんなかったけど」
ガス式の乾燥機でフワフワに仕上がった3日分の洗濯ものを畳みながら、りえさんはこれからのことを考えている。さすがに即離婚とはならないだろうが、なんらかの消えないシミが心に残ってしまったらしい。
突如、「うわああ!」と叫び、りえさんは空の洗濯乾燥機に上半身を突っ込んだ。人間も洗濯ものみたいに、きれいさっぱり洗えればいいのにねえ。
「おつかれ。話聞いてくれてありがとうね」
「いえいえ、こちらこそ」
ビジネスホテルの前までりえさんを送り、家路を急ぎながら思う。
やっぱり、私はりえさんが大好きだ。だってりえさんは、自分の気持ちを矮小化しなかったから。投げかけられたひどい言葉に、「たいしたことない」って顔をしなかったから。ごまかさず、受けた傷にジタバタできる人こそが本当に強いのだと、りえさんは教えてくれた。
気絶するように寝ていた
気づいたら、仕事場の床で気絶するように寝ていたことが何度かある。一昨日もそうだった。どう寝転んだかすら記憶があやふやで、時計を見ると一時間以上経過していた。疲れってすごい。人間の動きを、ピタッと止めることができる。

