テレビや新聞には顔が映らないのに、SNSだけで顔が広まる。そんないびつな状況が生まれていった。
もちろん、母親のとも子さんの顔もテレビには映らない。捜索に加わってくれた女性が、他のボランティアから母親と勘違いされて「母親の態度が悪かった」などとSNSで噂が広がることもあったという。
広がる「妄想」で犯人視される家族
断片的な情報だけで、事実の全体像を把握することは難しい。それでも、人はSNSやネットに出ている情報を過大評価し、断片をつなぎ合わせ「意味」を見出そうとする。
キャンプ当日、小学校ではもともと運動会が予定されていた。とも子さんは運動会で店を休むことをインスタグラムに投稿していたが、台風予報で運動会が延期になり、以前から誘われていたキャンプに参加した経緯までは書いていなかった。
そのため、ネット上の人々は「運動会で店を休みにしたのに、親子でキャンプに行っているのはおかしい」と騒ぎ始めた。
やがて、あるブログがとも子さんを犯人視し、「母親が怪しい」「人身売買・臓器売買した」などと虚偽を繰り返し投稿した。根拠のないデマは拡散され、「母親が殺した」と断定する声へとエスカレートする。夫や長女の個人情報まで晒された。
ブログ運営者の男は2年後、名誉毀損罪で有罪判決を受ける。1人5役の人格を使い分けてまで、ネット掲示板に投稿していたことも明らかになった。

