仕込みは夜通し行われ、朝に焼き上げる。週3日の営業だが、営業日以外も生地や具材の仕込みに追われる多忙な日々だ。それでも、以前のように週6日フル回転で働いていた時とは心の持ちようが全く違うという。
店には、庄司さんの発信をSNSで見て、同じ化学物質過敏症に悩む人々が全国から訪れるようにもなったこともモチベーションのひとつになっている。
「週に数日店を開けて、直接お客さんと対話しながら、どんな思いでパンをつくっているかを伝えたいという夢がありました。今はその夢が叶い、自分の体調に合わせたちょうどいいペースで働くことができています」
現在50代の庄司さん。那須での暮らしを通して、老後に対するイメージも劇的に変わったという。
「以前は、高齢者住宅といえば『望むと望まざるとに関わらず、入れられる場所』というネガティブな印象を持っていました。しかし、ここで生き生きと働く先輩方の姿を見て、老後への憧れを抱くようになったんです。
70代であっても現役で元気に活動している。だったら、私も『まだまだこれから新しいことにチャレンジしてもいいんじゃないか』と思えてくるんです。
新しい夢は、ここを工房として残しつつ、近隣の物件を購入して改修を行い、化学物質過敏症の人も安心して集える飲食店やワークショップの場をつくること。季節の果物でジャム作りや自家製梅干し作り、コーヒーの淹れ方やパンづくりなど、自然に沿った暮らしの知恵を共有できる場所にもしたいです。
かつてどん底にいた時には考えもしなかった未来ですが、今は少しずつその形が見えてきています」
「これからの人生」を前向きに考えるための住まい
今回4人の入居者の方々のインタビューを通して感じたことは、これからの人生をどう過ごすか前向きに考えていらっしゃる方ばかり、ということ。人生100年時代に、50代、60代は「まだまだ現役」かつ「老後のひとつ前」のライフステージだ。
子育てがひと段落し、ケアは必要ではないけれど、漠然とした将来の不安もある、この時期に、医療・看護・介護ケアがワンストップで受けられ、助け合うコミュニティがあることはどんなに心強いか。超高齢化社会におけるひとつの理想形といえるかもしれない。
取材・文/長谷井涼子
