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「空き家放置」の経済学 家賃高騰の東京にも空き家多数、個人の"合理的判断"が社会全体の損失を生む

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生産性と居住性が高く住宅価格が上昇し続ける「スーパースター都市」が注目されている(撮影:今井康一)
  • 金山 友喜 英ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス 博士課程在籍
  • 定行 泰甫 成城大学 経済学部准教授
*2026年6月6日10:00まで無料の会員登録で全文をお読みいただけます。それ以降は有料会員限定となります。

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「スーパースター都市」という概念が、近年、都市経済学の分野で注目を集めている。高い生産性と居住性を備え、高所得者が集中することで、住宅価格が継続的に上昇する都市を指す概念だ。典型例として、ロンドン、ニューヨーク、パリ、東京などが挙げられる。

こうした都市では手頃な価格での住宅確保が課題となる一方で、空き家が放置されるという一見矛盾した現象も起きている。例えば総務省の「住宅・土地統計調査」によると、東京23区における2023年時点の空き家率は約10.9%だったが、そのうち2割以上(約15万戸)を、いわゆる「放置空き家」が占めている。放置空き家とは、賃貸や売却を目的とした市場への供給が行われていない空き家のことだ。

住宅価格が高い都市なら、空き物件は賃貸に出すか売却するほうがよさそうに思える。それなのになぜ、空き家が放置されるという現象が生じるのか。そして、それは都市にどのような影響(波及効果)をもたらすのか。本稿では、筆者らの研究を踏まえ、①都市ならではの空き家放置の一因、②近隣への影響、③住宅市場全体へのより広範な影響を紹介する。併せて、同様の問題に直面してきた海外における政策事例を紹介する。

高需要なのに「空き家放置」が起きる逆説

一般に、空き家の放置が生じる理由は、「所有者にとって家屋を売却したり利活用したりすることによる便益が、それらの費用を下回ること」である。とりわけ日本では、相続をきっかけとして空き家が発生しやすい。一度発生した空き家は、税制、家族の事情、住宅の特性など複合的な要因で長期化することが知られており、利活用の便益が費用を下回りやすい衰退地域における空き家の長期化がとくに問題視されてきた。

しかし、この枠組みだけでは、スーパースター都市で空き家が放置される理由を十分に説明することができない。人口増加、経済活力、都心部への近接性などによって比類なき住宅需要を有する都市であれば、ほとんどの場合、利活用の便益が優位を占め、空き家は活用されると考えられるためである。

スーパースター都市で空き家が放置される理由を理解するためには、所有者が抱く「期待」に着目する必要がある。住宅需要が高まる都市では、将来の資産価値の上昇に対する見通しが、空き家所有者の今日の意思決定に大きく影響を及ぼすのである。

つまり、スーパースター都市に空き家を所有する人は、「今、売ったら損をする可能性が高い。将来もっと高く売れるか、もっと良い条件で活用できるかもしれないから、当面は放置しておこう」と考える場合があるのだ。

将来、幹線道路建設が予定(予想)されている地域を例に考えてみよう。所有者は、道路建設予定地に空き家を放置しておけば、用地買収の際に補償を受けられる。また沿道地域では、住宅系から商業系への用途変更に伴う容積率の緩和により、将来、今よりも収益の大きい高層建築が可能になる場合がある。

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