さらに、ここに「確証バイアス(※3)」が加わる。
心理学者のウェイソン氏が示したとおり、人はすでに持っている印象を「確認する情報」を優先的に処理する。支持者は「やっぱり頼もしい」という情報だけを受け取り、批判者は「やっぱり怖い」という情報だけを受け取る。
笑顔が消えた瞬間、支持者には「真剣な顔」に見え、批判者には「本性が出た」と見える。
これが「強い顔の政治家は必ず分断を生む」という、見た目の科学が示す宿命的な構造だ。
ネガキャン動画問題が引き起こした「知識バイアス」
今回の「“ネガキャン動画”問題」は、この構造をさらに深刻にした。
トドロフ氏がもう1つ指摘している現象がある。「知識バイアス」だ(※2)。
人は、ある人物についての情報が加わると、その情報を通じて顔を見てしまう。
「この人はスパイだ」という情報を持って、その顔を見ると疑わしく思える。逆に「英雄である」という情報を持って見ると、頼もしく映る。顔自体は変わっていないのに、情報が顔の印象を書き換えてしまうのだ。
週刊誌などで報道されていた、高市首相の陣営が「約20台のスマートフォンとAIを駆使して、1日100本ものライバル候補や野党のネガティブキャンペーン動画を配信していた」という情報が加わった瞬間、高市首相の顔はどう見えるか。
これまで「強いリーダー」として見ていた人々の脳内でさえ、その顔が「狡猾さ」や「二面性」のシグナルとして処理され始める可能性がある。支配性の高い顔――鋭い目線、力強い表情――が、今度は「裏がある人物」の証拠として読み取られてしまうのだ。
注目すべきは、この「知識バイアス」が過去の記憶にもさかのぼって作用することだ。
