社会的価値と財務的リターンの両立を目指す「インパクト評価」に企業や投資家の関心が急速に高まってきている。リスクの管理に主眼を置く従来型のESG(環境・社会・企業統治)評価とは異なり、企業が社会や環境に与えるプラスの影響そのものを測り、価値として可視化しようとする点が特徴だ。金融庁や日本経済団体連合会(経団連)も指標・データのあり方の整備を進めており、開示の枠組みづくりも本格化しつつある。この連載では、その全体像を多角的に読み解いていく。
第1回は、社会課題解決の成果を定量・定性の両面から評価するインパクト評価が求められている理由について解説する。
【配信予定】
②社会的インパクトの貨幣換算が企業価値を映す物差しに(7月7日)
③フィリップス例示モデルで示す3軸での評価結果活用法(7月8日)
④SDGsインパクト評価は海外首位がユナイテッドヘルス、国内は武田薬品工業(7月9日)
⑤外部性評価で日本勢トップは世界3位の富士通、インパクト投資効果を検証(7月10日)
定量・定性の両面からインパクトを評価
近年、企業や投資家が社会課題の解決に果たす役割が大きく拡大してきた。SDGs(持続可能な開発目標)が国際的な共通アジェンダとなり、ESG(環境・社会・企業統治)の視点が事業活動のスタンダードとして世界的に普及している。
ただし、これまでのESG投資やサステナビリティ経営の中心は、環境破壊や人権侵害を避ける企業を選別する「ネガティブ・スクリーニング」だった。これはリスク低減には一定の成果を挙げてきたが、「何をしないか」を中心とした評価で、気候危機や経済格差、地域コミュニティーの衰退といった課題に対し、企業が「どのような価値を生み出したか」は伝わりにくかった。
だが今、企業に求められているのは、リスク回避にとどまらず、「どれほどのポジティブなインパクトを創出したのか」を定量・定性の両面から評価することだ。これは単なる説明責任の強化ではなく、企業価値の源泉そのものを理解し、戦略を高度化するための重要なプロセスである。そして、その成果を可視化する手段として「インパクト評価」の必要性が一層高まっている。
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