こうした座りっぱなしのリスクについては、近年、加速度計を用いた疫学研究によって、解明が大きく進みました。
以前は「1日どのくらい座っていますか」という、自己申告によるアンケートが中心でしたが、人は自分の座っている時間を正確に覚えていません。そこで近年は、腰や手首に装着した小型の加速度計センサーで、立っているか・歩いているか・座っているかを客観的、かつ継続的に記録する大規模研究が主流になってきているのです。
例えば、アメリカの高齢女性を対象とした大規模研究では、加速度計を弾性ベルトで被験者の腰に固定し、7日間連続(入浴時などは外す)でその様子を記録しました。
データは60秒ごとの単位で集計され、1分当たりの加速度カウントを基に、どの時間帯に座っていたか、どの程度の強度で動いていたかを解析します。
イギリスの大規模疫学データベース「UKバイオバンク」を使った研究では、手首に装着した加速度計を7日間、24時間モニターしました。10万人超が参加した膨大なデータから、睡眠・座位・軽い活動・中高強度の運動といった行動を分類しています。
このような加速度計によるデータを分析し、「長く座ることが健康に悪い」という結論が両方の研究を基に発表されています。
「運動しているから」は通用せず
■座りっぱなしと死亡率の関係
前述のアメリカのグループによる2024年発表の研究では、平均年齢79歳の女性約5800人について、死亡との関連を調べています。すると、1日11.6時間以上座っている女性は、9.3時間未満の女性と比べて全死亡リスクが57%高く、心血管死亡リスクが78%高いことが示されました。
重要なのは、この関連が運動習慣を考慮したうえでも相殺されなかった点です。
つまり、定期的な運動をしているからといって、長時間座りっぱなしのリスクを完全に打ち消せるわけではない可能性があるのです。
同じ研究を基にした2024年の別の論文では、63〜99歳の女性5951人を対象に、座っている時間と心不全の関連を調べています。その結果、座っている時間が長いほど、心不全リスクが高まることがわかりました。
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【1日10時間超で脳にも影響】
