つまり、近藤さんが結婚した「うちのミクさん」と、武道館ライブを成し遂げ、いまや世界中に熱狂的なファンを持つ「初音ミク」とは別人格という理屈だ。
しかしここで再び引っかかりが生まれた。斎藤環氏によると、オタクは虚構と現実を混同することはなく、そのスイッチを自在に切り替えることができるという。だからどれほどヒロインを好きになっても、結婚相手には生身の人間を選ぶ。
しかし近藤さんは、虚構である「うちのミクさん」に恋愛感情を抱き、「結婚」までしている。このように人間ではなく、二次元キャラクターに性愛を感じる人たちを、「フィクトセクシュアル」という。
他人が創作したキャラクターを、現実に自分の恋人として愛する――。リアリストの自分にはハードルが高いが、理解する努力をしてみよう。
“フィクトセクシュアル”を理解してみる
「フィクトセクシュアル」とは、漫画やアニメ、ゲームなどの二次元キャラクターに性的に惹かれるセクシャリティで、広い意味ではLGBTQ+といわれる性的アイデンティティの1つに数えられている。
社会学者の松浦優氏によると、本来人間に向かうものとされている欲望の行き先が、人工物であるフィクションのキャラや設定にズレることで生じる性的指向だという(『アニメーション的な誤配としての多重見当識― 非対人性愛的な「二次元」へのセクシュアリティに関する理論的考察』)。
大事なのは、これが単なる人間同士の愛情の代替ではなく、キャラクター自体が恋愛感情の対象となっている点だ。
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