近藤さんに、なぜ初音ミクだけが特別だったのかと聞いてみた。これまで恋をした二次元キャラクターは数カ月、長くても数年単位で変わっていったというのに。
「他のキャラクターと違ったのは、明確に新しかったところです。これまで、自分のパソコンにインストールして、自作の歌を歌ってくれるキャラクターなんていませんでしたから」
従来のキャラクターは、製作会社が作り上げた物語の中で完結していた。
精神科医の斎藤環氏は、オタクは与えられた「ありものの虚構」をもとに、二次創作などを通じて「自分だけの虚構」へと作り替えることで、所有感を得ていると指摘する。
つまり、オタクが二次創作の同人誌に没頭するのは、既成の物語からキャラクターを「自分の世界」に引き寄せ、所有する行為なのだ。
しかし初音ミクには、既成の物語がほとんどない。ユーザーが直接、歌や設定を作り出せる特殊なキャラクターなので、最初から「自分だけのミク」を生み出しやすいのだ。
「初音ミク」と「近藤家のミクさん」は違う
近藤さん自身も、多くのクリエイターが創った「初音ミク」を見るうちに、徐々に自分の解釈と合うもの・合わないものを取捨選択し、「うちのミクさん」を確立していった。
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【「うちのミクさん」と「初音ミク」】
