1年半かけてサポートを続けた結果、彼女は自らの意思で髪型やメガネ、アクセサリーまで変え、「自分で服を選べるようになった。新しい人との繋がりができて仕事も順調で、すごく楽しい」と心からの喜びを語るまでに変貌を遂げた。
まるで映画のようなビフォー・アフターだが、この背景には百貨店が生き残りをかけて挑んだ、ホスピタリティ溢れる原点回帰があった。
阪急と阪神の異例の合同プロジェクト
この「ファッションコンサルティングサービス」が立ち上がったのは2023年の8月。阪急百貨店と阪神百貨店が経営統合した2007年以降、両百貨店のさまざまな部署からメンバーが集まり、意見を出し合ったという。このような大規模な合同プロジェクトは異例だった。
その背景には、老舗百貨店の強い危機感があった。経営企画室・今川良佳ディビジョンマネージャーはこう振り返る。
「モノを売るだけの『モノリテーラー』から『コミュニケーションリテーラー』への変革を目指す段階にありました。モノが溢れる時代ですからね。お客様はモノだけでは満足されなくなりました。もっと、『なりたい私』『送りたい暮らし』を実現するために、百貨店らしいサービスや人にフォーカスすることが必要だったのです」(今川さん)
このサービスの価格は、120分で3300円。百貨店のプロがつきっきりで対応することを考えれば、人件費としては赤字に見える。しかし、今川さんは「こういったコーディネートサービスの価格帯を吟味したうえで、まずはなるべく多くの人に体験いただきたいと思い、この値段に設定しました」と語る。
古くから百貨店では、訪れる客の相談に無料で向き合うのが一般的だった。現場ではその名残りがあり、有料化するということへの戸惑いがあったようだ。
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【「ブランドのいいとこ取り」ができる】
