2016年に当時高校生だった実の娘に対して、性的暴行を行ったということで「準強姦罪」に問われていた富山県黒部市の元会社役員、大門広治被告(54)は、期限の5月7日までに上告せず、懲役8年の実刑判決が確定した。
被告は、これまで一貫して無罪を主張してきたが、裁判では「自己の性欲を満たすための卑劣な犯行」であると認定された。
この事件は単なる性犯罪ではなく、家庭内の支配と信頼の破壊という側面を持つ。実の娘に対して、性的暴行をはたらく心理とは何か。そして、被害者はいかに回復していくのか。犯罪心理学とトラウマ研究の観点から考えてみたい。
日本における性的暴行の実態
内閣府の「男女間における暴力に関する調査」(令和5年度)によれば、性的暴行の加害者は交際相手・元交際相手が最も多く、合計で約3分の1を占めるが、実の親というケースも2%程度存在する(下図)。
ただし、これは自己報告ベースの数字であるため、口外したくない被害は「暗数」となり、数字に表れていない被害がある可能性も大きい。
少なく見積もって性的暴行被害の2%が実の親からという数字は、一見少ないように見えるかもしれないが、性的暴行被害者の50人に1人が実の親から性的暴行を受けているという実態は、けっして見過ごすことのできない重大な事態であるといえる。
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【「安全基地」であるはずの家庭の破壊】
