トラウマ研究では、強い恐怖にさらされた際、人は「闘争・逃走」だけでなく、「凍りつき(フリーズ)」反応を示すことが知られている。身体が動かず、声も出せなくなるのである。
前述の内閣府の調査でも、被害に遭った際に「泣く、叫ぶ、抗議する」等の言語的抵抗ができたケースは16%しかおらず、身体的な抵抗をしたケースはわずか11%である。それに対し、「驚きや混乱で体が動かなかった」というケースは23%に及ぶ。
被害者は無力感に支配される
特に、相手が親のような近しい存在の場合、被害者は混乱し、「これはおかしい」と認識することすら難しくなる。さらに、長期的な支配関係のなかでは、「拒否しても無駄だ」という心理状態に陥ることがあり、これを学習性無力感と呼ぶ。逃げ場のないとき、人は著しい無力感に支配され、相手のなすがままになってしまい、もはや抵抗すらできなくなるのである。
親族間の性虐待が深刻なのは、その後の人生への影響がきわめて長期に及びやすいからである。被害者は、複雑性PTSD(慢性的なストレス状態による心的外傷)、うつ、不安障害、自己否定感、対人不信、自傷行為、性的問題など、多面的な困難を抱えることがある。
特に、「本来守ってくれるはずの存在から傷つけられた」という体験や、親から加害を受け裏切られたという体験は、人間関係の基本的信頼感を深く損ないやすい。
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【トラウマ治療の中身】
