とはいえ、回復は十分に可能である。トラウマ治療では、「安全の確保」「被害を被害として言語化できること」「信頼できる他者との関係」「加害責任が明確化されること」が重要とされている。司法による認定は万能ではないが、「自分が悪かったのではない」「加害は犯罪だった」と社会的に確認される意味は大きい。
今回の判決を受けて、被害女性は「やっと自分の人生を生きていくスタート」と語った。この言葉は非常に象徴的である。親族間性虐待の被害者は、長期間、「加害者中心の人生」を強いられてきた場合がある。そこから距離を取り、自分自身の価値観や人生を再構築していくことが、回復の本質となるのである。
支配と虐待の問題
社会はしばしば、「なぜ逃げなかったのか」「なぜもっと早く言わなかったのか」と被害者を責めがちである。しかし、被害者にはまったく落ち度はない。
問題の本質は、子どもが逃げられない家庭という構造と権力構造そのものにある。親という絶対的立場を利用した性暴力は、単なる性犯罪ではなく、支配と虐待の問題として理解される必要がある。
被害者の安寧とこれからの幸多き人生を心から祈りたい。
