寺澤さんの部屋は、昭和的な木造アパートの緩い雰囲気の中に、一種独特なセンスが宿っていた。
玄関を入ると、まず目に入るのは服と靴の並び方。セレクトショップの一角のように、厳選されたアイテムが丁寧に置かれている。窓辺には観葉植物、お香、アクセサリー。
一方で、本人や友人が描いたという抽象的な絵や、メルカリで見つけたという鴨の剥製など、どこか普通からはみ出したものも、さり気なく飾られている。緩さと洗練と規格外。そのバランスが絶妙な空気感を醸し出している。
しかし本人はいたって力の抜けた様子で、それをことさらに語ろうとはしなかった。
「わからない」は、拒絶ではなく誠実さかもしれない
インテリアのこだわりはありますか?と聞いたとき、寺澤さんはしばらく考えてから「わからないです」と答えた。
彼は、取材を通じて何度も「わからない」という言葉を繰り返した。取材をする側としては正直困ってしまうが、彼が頭を抱えて考え込みながら絞り出す「わからない」は、適当に放つ拒絶の言葉ではなく、「そこに、考えるべきことがある」ということのようだ。
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【「わかったふりはしたくない」】
