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北朝鮮「最高指導者の通訳」はつらいよ 実力はネイティブ同等でも些細なことで左遷・更迭、炭鉱送りも

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2019年2月にベトナム・ハノイで行われた2回目の米朝首脳会談(写真:Anadolu/Getty Images)
  • 五味 洋治 ジャーナリスト、東京新聞 前論説委員
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ロシア駐在北朝鮮大使館で3等書記官として勤務していたが、ハノイでの米朝首脳会談後の2019年4月、金総書記がロシアのウラジオストクでプーチン大統領と会談した際のことだ。実力を買われてチョンが通訳として同行した。

その際、チョンは金総書記に宴会の演説文を渡しながら、「その場(演説台)に立って(演説を)なさればよいです」と説明した。

「そこに立って」と指示したばかりに

行事が終わって宿所に戻った金総書記はチョンの物言いにひどく機嫌を損ねており、李容浩(リ・ヨンホ)や崔善姫(チェ・ソンヒ)といった外務省幹部に向かって「どこからあんな生意気な野郎を通訳として連れてきたのか」と怒りをあらわにした。さらに、「縁起の悪いあいつの顔は見たくない。今すぐ送り返せ」と指示を下した。

翌日、チョンはウラジオストク発、平壌行きの飛行機で帰国させられ、代わりに別の女性通訳がその役割を引き継いだという。チョンは今も炭鉱で働いているという。

同書によれば、過去には、政府高官が自らの虚偽報告をごまかすため、部下のアラビア語通訳に通訳ミスの濡れ衣を着せたことがあった。この通訳は2年間強制労働させられ、廃人のようになって帰ってきたという。

北朝鮮で首脳の通訳をすることは、歴史的な瞬間に立ち会える特権であると同時に、命をかけた綱渡りのような仕事でもある。

トランプ大統領の中国訪問が5月中旬に予定されている。今のところ米朝首脳の会談予定はないが、トランプが突然、金総書記に会談を呼びかけ、会談が実現する可能性もなくはない。

北朝鮮外務省の1号通訳たちは、首脳会談が実現するのか、その場合、自分が1号通訳になるのか、不安な日々を送っているかもしれない。

(敬称略)

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