北朝鮮にとって最も重要な首脳会談は、2019年2月のハノイ米朝首脳会談だった。この会談で金総書記の通訳を務めたシン・ヘヨンは、外務省の情翻局の職員として勤務していた。
1982年生まれの彼女は、タイ駐在の北朝鮮大使館で貿易イルクンであった父親に同行して海外で生活し、英語を身につけた。外務省で実力と品性が検証された職員の1人であり、英語をハイレベルで駆使する人物だった。
緊張で通訳をもたつき、司書に格下げ
ところがトランプ大統領との重要な会談の通訳という重圧から、非常に緊張し、通訳が円滑にできなかったという。
不幸にも、このハノイ会談は何の成果もなく決裂で終わった。このため、シンにも責任追及が及んだ。彼女は労働革命化に処されたとの見方もあったが、劉によればそこまではいかず、外務省を辞めて平壌の中心街にある人民大学習堂の資料調査処研究士(司書のこと)として勤務している。あからさまな降格ではある。
この会談の決裂は、金総書記も腹に据えかねたようで、会談の事前交渉を担当した他の複数の外務省幹部も、地方に送られたと報じられている。再教育の末、ようやく中央に復帰したという。
劉が、「もっとも悲惨な運命をたどった」と表現するのは、ロシア語通訳のチョン・スンチョルだった。
チョンは1982年生まれで、平壌外国語大学を卒業した純粋な国内派だった。彼のロシア語の実力は極めて優れており、モスクワへの留学経験者たちからも「越えられない壁(圧倒的な存在)」と言われるほどだったという。
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