PCの薄型化が限界に近づいている。CPUの厚さ、基板の厚さ、ディスプレイの厚さ。主要な部品をこれ以上薄くする余地はほとんど残っていない。筐体の面積もディスプレイの大きさで決まるため、縮める余地は少ない。
同じ厚みで何ができるか
もちろん、0.5ミリでも薄くする努力は続けている。ただ、ベゼルが太く筐体も厚かった時代とは状況が違う。すでに十分に薄くなったノートPCから0.5ミリ削っても、ユーザーが進化を実感しにくい領域に入っていると塚本氏は言う。
「エンジニアからするととても大変なんですよ、少しでも薄くするというのは。ただ、そこに見合う価値をお客様が感じていただけるかというと、おそらくそうではない」
そこで塚本氏のチームは問いを変えた。0.5ミリ薄くする代わりに、同じ厚みでもっと意味のあることに取り組もうと。
この判断はレノボだけのものではない。AppleもMacBook Airの筐体デザインを22年から変えておらず、厚さを据え置いたままチップの世代更新に注力している。EUでは「修理する権利」の指令が24年に採択され、加盟国は26年7月末までに国内法へ移す。PCへの適用は策定中だが、修理性が製品設計の要件になる流れは明確だ。薄さよりも長く使えることが求められる時代になりつつある。
答えは2つあった。1つはAI時代に備えた処理性能の強化だ。26年モデルでは熱設計容量を前世代から約20%引き上げた。もう1つはメンテナンス性の向上だった。
「昔はThinkPad X1シリーズみたいなプレミアムで薄くて軽い製品は、メンテナンス性を諦めてくださいというのが一般的だった。今はそこも諦めない」
その考えから生まれたのがスペースフレームだ。従来のユニボディ構造では、筐体が一体成形のため内部へのアクセスが難しかった。スペースフレームは筐体を3分割する多層構造で、上下両面からアクセスできる。本体の基板を18%小型化し、空いたスペースに冷却ファンを81%大型化して配置した。
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【メンテナンス性もさらに向上】
