優雅さに加え、ある種の驚きも用意されている。車内には「スターライト・ブリーズ・スイート」を採用。
スターライトは、読者のかたもご存知と思うが、光ファイバーを使って作られる星空のこと。ルーフライニングに、1万500個の“星”がちりばめられるそうだ。
ブリーズは(明言されていないけれど)オープン走行中に、キャビンに適度に導かれる風のことだろう。
ウインドシールドは長めで、乗員の頭部の上にまで達するため、走行中の風の巻き込みは抑えられるはず。
私が気に入っているのは、「ソフトトップにあたる雨粒の音も楽しんでほしい」という技術者の表現だ。走行中はそれが聞こえるほど、ほかの騒音が抑えられているという意味でもある。
顧客が求めるのは「自分にしか得られない経験」
「いまは、顧客の注文にあわせてビスポーク(特注)的なクルマを手がけるメーカーが出てきていて、顧客もそれを望んでいますが、私たちと同じレベルまでやれるかどうかはわかりません」
発表の場で私にそう語ったのは、ロールス・ロイス・モーター・カーズのクリス・ブラウンリッジ最高経営責任者だ。
「クルマに乗ることを“経験”と呼ぶならば、私たちの顧客は、自分にしか得られない経験をつねに求めています。一時期、私たちは(コーチビルド・サービスを)中止していましたが、顧客はずっと、それを待っていてくれたのです」
そこには昔からのロールス・ロイスを知る層もいるし、初めてロールス・ロイスを買う層もいるそうだ。
私なりに解釈すると、超富裕層マーケットで重視すべきは、ブラウンリッジ最高経営責任者の言葉にあるように「クルマ」でなく、比類なき「体験価値」だと教えてくれていることだ。
注文を受けてから4年かけて製作するというプロジェクト・ナイチンゲール。28年から納車予定で、買えるのは「ロールス・ロイスのデザイン哲学に深い共感を持つお客様」としており、招待制で提供するそうだ。
つまり、顧客はメーカーが選択する。これが富裕層ビジネスのキモである。
