馬車のやりかたと同じで、実際にボディ製作者は「コーチビルダー」と呼ばれた(イタリアではカロッツェリア)。
私が個人的に好きなロールス・ロイス車は、1933年代のパークウォード製「ファントムⅡ」セダン・デビルや、同年に同じシャシーを使ったフリーストン&ウェブ製の「ファントムⅡ」クーペ。
ちょっと独特なデザインでは、51年にフーパーが手がけ、半透明のルーフを4ドアボディの「レイス」に被せたモデルも捨てがたい。
目的に応じて、ロングホイールベースのリムジン、後席だけソフトトップのランドー、自分でドライブする人のためのセダン、リムジンとセダンの中間的なショファードライブ用のセダン、スポーティなクーペ、フルオープンのドロップヘッドと、オーナーのライフスタイルに合わせてボディ形式も多様だった。
「サヴィルロウでスーツを仕立てることや、パリのオートクチュールのドレスと同じく、個性の表現そのものです」
ロールス・ロイスでは、コーチビルドの意義をそう説明する。コーチビルドに関して、RRを神話的存在に押し上げているのは、同社の哲学だ。
「(創業者の)チャールズ・ロールズとヘンリー・ロイスが定めた唯一の制約は、ラジエーター周りの比率を固定し、すべてのクルマが紛れもなくロールス・ロイスであることを明確に保つことでした」
ロールス・ロイスが当時、コーチビルドするにあたってオーナーに伝えていたのが、上記のことだとプレスリリースで紹介されている。
現代に生きる「コーチビルド」の世界
実際、いまも特別なクルマという“伝統”は守られている。2台として同じクルマはない、と言うぐらい特別注文で仕立てられるロールス・ロイスのプロダクト。
車体色や内装の仕上げにはじまり、トップはシャシーから設計される「コーチビルド」の車両。
最近でも、2017年の「スウェプトテール」、21年の「ボートテール」、23年の「ドロップテール」といったモデルが送り出されてきた。ボートテールはオーク材をボディに使い、高級ヨットの雰囲気だ。
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【プロジェクト・ナイチンゲールは「100台」の予定】
