今後のハードウェア差別化のためには、「ミスター・Appleシリコン」のような存在であるスルージ氏の役割がさらに重要になる。
ハードウェアについての判断を、CEOであるターナス氏とCHOであるスルージ氏がともに行っていく体制になる、と考えられる。
新しい柱となるハードウェアにどう取り組むのか
これからのアップルに求められているのは「次の柱」だろう。スマートフォンであるiPhoneは今後も主軸であり続けるし、MacやiPadも重要だ。
ただ、業界全体で「AIを核に据えた新しい製品」の開発競争が進んでいる今、アップルとしてもその流れを無視するわけにはいかない。ターナス氏はまず、AI戦略をどう進めるのか、明確な舵取りを求められそうだ。AIというソフトウェアをどう扱うかだけでなく、それでどうハードウェアを魅力的にするのか、という観点での差別化が行われるだろう。
アップルの戦略には「勝つまでなかなか止めない」という特徴がある。初期にブームになってもその後幻滅期が来て、ライバルが製品計画を見直すことは少なくない。だが、アップルはその中でも着実に続ける。続ける中で価値が発見され、他社より先に定着し、商品としてのシェアが高くなる。
iPadで注目を浴びた「タブレット」も、Apple Watchなどの「スマートウォッチ」もそうだ。じっくりと取り組んだ結果シェアを拡大、収益性も改善していった。
「HomePod」に代表されるスマートスピーカーや、「Vision Pro」のようなXR機器も、現状は大きな成功を得られてはいないものの、アップルは撤退してないし、明確に「継続する」とコメントしている。
製品がヒットするには、技術と価格、価値のバランスが重要。クック体制の中では、スタートの段階でバリューのバランスがずれていても、粘り強く残すことで状況を変えていき、結果的にヒット商品にしている。
ターナス氏の体制で、そうした部分はどうなるのだろうか? 「勝つまで待つ」戦略なのか、それとも「勝つとわかった製品を出す」戦略なのか。
サプライチェーンの天才とハードウェアのビジョナリーでは、そんな部分で舵取りに違いが生まれそうでもある。
