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糖尿病でも「好きな外食」を優先…83歳女性の《食事制限より大切なこと》を支える訪問看護師が見た、"幸せな老後"の正解

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在宅看護
闘病や最期を、病院ではなく自宅で過ごすという選択。それを支える訪問看護師がいます(写真:kouta/PIXTA)
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北海道森町在住の木村さんがリリーを開設した八雲町は、木村さんの生まれ故郷である。函館市と室蘭市の中間に位置し、東京23区の約1.5倍の面積に人口は1万4000人余り。少子高齢化と人口減少が進み、広大な町内と近隣町村は医療過疎地域だ。

リリーは開設時から現在も、八雲町と近隣町村では唯一の民間ナースステーションである。木村さんを含めた看護師4人体勢で、365日7時から21時まで利用者宅を訪問しながら、24時間オンコール、緊急時訪問もこなす。

全利用者宅に持っていく基本の看護セット(写真:木村久子さん提供)

八雲にある医療施設はほとんどが平日9時から17時、日祝日は定休日という体制だ。リリーは医療の空白を縫うように利用者宅を訪問する。訪問に使う車の1カ月のガソリン代は12万円。年間走行距離は6万キロを超えるという。

2年前からリリーを利用しているAさん(83歳)は、夫と死別した20数年前から1人暮らしだ。2人の子どもたちは車で3時間の札幌に住む。

糖尿病でも好きに外食をする

Aさんは14年前に2型糖尿病発症、3年ほど前からごく軽度の認知症も出現している。週1回の治療薬の注射のために通院していたが、診察日を忘れたり、雨の日は来なかったりということが続き、Aさんの自宅から徒歩数分のリリーに、主治医から訪問看護の依頼がきた。

小柄でおしゃれ。いつもニコニコしているAさんには町内にちゃん付けで呼び合う昔からの友人が大勢いて、毎日のように家を行き来してお茶をし、行きつけの喫茶店に集合してランチを楽しむ。友人の家族の車でおいしいものを食べに遠出することも多い。

「過去に糖尿病の食事療法の指導も受けたそうですが、友だちとの外食が楽しいからできるわけもなく……(笑)。代わりに週1回の注射が選ばれたって感じですね。主治医が出した在宅療養の方針は唯一、現状維持だけ。薬を毎日飲んで、週1回きちんと注射をしていれば日常生活の制約も特にありません。食べることは大好きですが、外食しても年齢的に食べる量はそれほどでもないし、カロリーの制限よりも皆でわいわい食べるほうが、Aさんには大事なんです」

娘も、母の性格と暮らしぶりを十分に把握している。「母の今の生活の中でコントロールできることがあればそれでいい」というスタンスだ。

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【自宅に誰かが来てくれるのがうれしくて仕方ない】

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