しかし、発育発達の途中にある子どもでは、量を積むことがそのまま質の向上につながるとは限りません。負荷のかけ方を誤れば、動作の習得は遅れ、身体にも心にも余計な負担を残すことがあります。
運動会の練習で本当に重視すべきなのは、「どれだけやったか」ではなく、「どんな動きを、どんな状態で経験したか」という点です。運動生理学と発育発達学の視点から見れば、学校現場で当たり前のように行われている練習の中にも、見直したほうがよいものは少なくありません。
走り込みは、本数より「質」が重要
典型的なのが、徒競走やリレーにおける走り込みです。全力で何本も走らせれば速くなる、という考え方はわかりやすいものの、短距離走は単なる根性比べではありません。
もちろん筋力は必要ですが、実際のパフォーマンスを左右するのは、脳から筋肉へどれだけ正確なタイミングで指令を送れるか、つまり神経系の働きでもあります。
この精度は疲労の影響を受けやすく、回復が不十分なまま反復すると、フォームは崩れ、接地や腕振りの質も落ちていきます。
問題は、子どもの身体がその「崩れた動き」ごと覚えてしまうことです。運動学習には、繰り返した通りに動きが定着しやすい性質があります。質の低い反復を何度重ねても、身につくのは質の低い動きになりかねません。
量を増やすほどよくなるとは限らず、むしろ逆効果になることもあります。必要なのは本数主義ではなく、一本ごとの質を上げることです。姿勢、腕振り、接地の感覚など、意識する点を絞り、短くてもよい反復を積む。そのほうが、結果として速さにもつながりやすくなります。
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【ダンスは「通し練習」だけでは身につきにくい】
