「雪ぐに」の登場や、YouTuberのHIKAKINの地元のソウルフードから生まれた「みそきん」など、妙高の味噌ラーメンは首都圏でもじわじわと広がりを見せている。そのタイミングでの「食堂ミサ」関東進出は、まさに特大ニュースと言っていい。しかも、それを担うのが異端の成功者である鶴岡さんだ。
一方で、当人は浮かれてはいない。
「正直、めちゃくちゃきついです。プレッシャーもあるし、自分のラーメンじゃないものを作るのは本当に難しい」
レシピも体系化されておらず、再現は困難。それでも、これまでの29年間の経験を総動員し、「再構築」という形でミサの味を表現しようとしている。
そしてこの挑戦は、単なる業態転換ではない。鶴岡さんにとっては、ラーメンとの向き合い方を根本から問い直すプロジェクトでもある。
「もう、がんじがらめのラーメンから解放されたいんですよ」
「生活の中に自然にあるラーメン」の価値
SNS、レビュー、点数競争。現代のラーメン業界は、過剰な評価経済の中にある。その中で疲弊し、「ラーメンが嫌いになりかけていた」とまで語る。だからこそミサのような、「生活の中に自然にあるラーメン」に可能性を見出した。
「パッと食べて、パッと帰る。それでいいじゃないですか」
特別ではなく、日常であること。その価値に気づいたとき、鶴岡さんの中で何かが大きく変わった。
今回の挑戦が成功すれば、関東におけるミサの展開、さらには地方ラーメンの再評価にもつながる可能性がある。本人も将来的にはプロデュース業へ軸足を移し、「悩んでいる飲食店の受け皿になりたい」と語る。
激動の一年を経て辿り着いた、新たなスタート地点。それは、一人の職人が29年かけて辿り着いた「ラーメンの再定義」であり、同時に、これからの飲食業のあり方を問い直す実験でもある。
ラーメンとは何か。店とは何か。人生とは何か。その問いに対する一つの答えが、4月28日、八潮の地に現れる。
次ページが続きます:
【その他の画像】

