宇宙を舞台としたビジネスは、「造る産業」から「使う産業」へと移りつつある。ものづくりの雄であるIHIが、その展開に踏み出した。
IHIが衛星コンステレーション事業に乗り出す。衛星コンステレーションとは、多数の小型人工衛星を連携させて運用し、地球全体をカバーする通信・観測システムのことだ。
1950年代後半から人工衛星打ち上げ用ロケットの研究を始め、日本の宇宙開発の主軸を担ってきた同社が、複数の小型人工衛星を連携運用する新領域に踏み込む。
2025年10月、フィンランドの衛星事業大手ICEYE(アイサイ)と、低軌道のSAR(合成開口レーダー)衛星4機の調達契約を締結。26年4月から手始めに2機での運用を開始し、取得した衛星データを省庁や民間企業に販売していく。
IHIといえば、国の基幹ロケット「イプシロン」の製造や、三菱重工業が手がけるH3ロケットの固体燃料ロケットブースターの開発・製造を担ってきた、典型的なハードウェア企業だ。なぜ今「データビジネス」に踏み出すのか。
ハードウェアの雄が「データ」参入のワケ
「グループの宇宙事業はこれまでロケットなどハードウェアを中心に展開してきたが、事業の幅を広げるため、衛星データを活用したビジネスに照準を合わせた」。IHI航空・宇宙・防衛事業領域宇宙システム事業推進部の朝倉良章部長はそう語る。
背景にあるのは、政府の巨額の宇宙関係予算だ。内閣府の資料によれば、25年度補正予算を含め26年度は文部科学省が約3000億円、防衛省が約2200億円を計上し、政府全体で1兆円を超える宇宙関係予算が組まれている。
ウクライナ戦争を契機に、宇宙から高頻度かつ詳細に地上を観測する軍事需要は急速に拡大した。日本の防衛当局も、地上約500㎞の低軌道を周回する複数の衛星を利用して、対象地域を継続的に監視する能力の確保が迫られている。防衛省は、民間の新技術も活用しながら観測データの拡充を進めている。
26年2月には、防衛省が「スタンド・オフ防衛能力(遠方から対処する能力)の実効性確保」を目的に、「衛星コンステレーションの整備・運営等事業」の契約を締結した。三菱電機などが出資する特別目的会社を事業主体とし、5年間で約2831億円を投じる。QPS研究所などのベンチャー企業が運用する小型衛星のデータを、防衛省に提供する枠組みだ。
IHIはこの事業には参画していない。しかし、宇宙事業のパイオニアとして、傍観者であり続けるわけにはいかない。
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