自分は過去に、熊本県立大学でこの構想を牽引する黒田忠広理事長にインタビューしたことがあります。その中で黒田理事長はこう述べています。
つまり、熊本に工場があるから人を外から集めればいい、という発想ではなく、むしろ熊本で学び、熊本で育ち、熊本から世界につながっていく人材の流れをつくりたい。そこまで含めて、この学部は構想されているのです。
懸念する点は熊本県での知名度
さて、ここまで熊本県立大学半導体学部の明るい兆しについてお話ししてきましたが、一点だけ自分は懸念していることがあります。それは、肝心の地元熊本県での知名度です。
自分は昨年、熊本県にある2つの高校の高2の学年(つまり今年の高3にあたる生徒たち)に講演会をしたことがあります。その中で、「熊本県立大学にこういう学部ができるって知ってる?」と聞いたとき、「知ってる」と答えたのは体感で1割程度でした。これだけニュースになっていて、これだけ面白い構想で、それでもなお、現場の高校生には十分に浸透していないのか、と驚きました。
ここで、「大学の広報が足りないんじゃないか」と言いたくなるかもしれません。けれども、それも少し違うように思います。なぜなら、熊本県立大学は実際にかなり動いているからです。黒田理事長自身が県内高校へ足を運んで講演も行っています。たとえば熊本県立第一高校では、新学部設置に向けた取り組みを紹介したうえで、生徒から「県立大の新学部についても進学先として調べてみたい」という声が出ているそうです。大学側の広報の努力に関しては疑うべくもありません。
では、なぜそれでも浸透しないのか。ここで見えてくるのは、新しい大学や学部の情報は、大学から高校生へ一直線には届かないということです。間には、学校の先生、保護者、地域の大人、進路指導の空気、そうしたいくつものフィルターがあります。
自分も九州の学校の先生方と関わることがありますが、本当に詳しい先生は驚くほど詳しい一方で、「半導体学部?そんなの知らなかったです」という先生も少なくありません。そして、大人が知らないものは、子どもにもなかなか届かないものです。これだけスマホでの情報収集が当たり前になっていますが、やはり高校生の進路選択に関する情報源は学校の先生である場合が非常に多いです。そうなると、先生が知らないと高校生に届かないわけです。
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【学部が育てようとしている人材】
